「タワーや高台の避難所には逃げ切れない」

ただ、南海トラフ巨大地震で錦地区には最大で16メートルの津波が予想されています。錦タワーの4階部分は海抜16メートル。つまり、錦タワーの5階まで階段でのぼりきらなければ津波に流されてしまう可能性があるのです。

1秒でも早く避難するため、住民は訓練を重ねてきました。

町は2013年に高さ24メートルの2つ目の「錦タワー」を完成させ、2つのタワーはいつしか、安心を与える町のシンボルに。しかし、いま新たな課題に直面しています。

(谷口さん)
「10年前だったら、階段をタッタッと上がっていけた。(手押し)車を持って上がれない」

ともに88歳の谷口てるゑさんと、友人の谷口りよ子さんは「錦タワーや高台の避難所には逃げ切れない」と不安を口にします。

少子高齢化で錦地区の高齢化率は55.8%に。確実に命を守るため、発想の転換を迫られた町は沿岸部の住宅の「高台移転」に舵を切りました。希望する人に、早ければ2028年度に移転してもらう予定で、住民約300人のうち谷口さんらを含む半数が賛成しているということです。

(鷺谷教授)
Q.大紀町の対策から学べることは?
「必要なものは地域や時代によって変わる。自分の地域を見つめて対策をとる。重要な教訓として我々は学ぶべきこと」

「二度と津波の死者を出さない」と決めた錦地区。地域の事情にあった対策が、再び動き始めています。