外国人兵を盾に…「死ぬまで前進しろ」
騙されてロシア軍に参加させられた被害者の多くは、貧しい農村部の出身者です。私たちは、首都カトマンズから120キロ離れた、山あいの集落を訪ねました。

去年8月、ロシア軍から脱走したダワー・タマンさん(22)の足には、ウクライナ軍による砲撃で被弾した傷跡が残っています。
ロシア軍に参加させられた ダワー・タマンさん
「戦場には無数の死体が散らばっていました。希望など何もありません。私はただ運よく生き残っただけです」
タマンさんはそもそも友人とフランスへ出稼ぎに行く予定でした。ところが2023年10月、ネパールの斡旋業者からロシアを経由するよう指示されたといいます。ロシアへ入国すると、迎えにきたロシア軍関係者から、いきなり契約を迫られたといいます。

JNNが入手したロシア軍の契約書によると、陸軍兵舎でロシア兵の補助を担う業務で、月給は3000ドル(約45万円)、ネパールの平均月収の10倍以上の額が提示されています。
タマンさんたちは、斡旋業者への借金もあったため、契約したといいます。
入隊したばかりのタマンさんと友人。このあとウクライナの国境近くで約2週間、ほかのネパール人たちと射撃訓練などを受けました。その後、歩兵部隊として、激戦地のドネツク州に送り込まれたといいます。わずかな装備と食料で、寒さと飢えをしのぐ劣悪な環境でした。
ダワー・タマンさん
「私たちは最前線にいたのですが、後方にいるロシア兵は、仲間である私たちを撃ち殺すことも気にしないのです。生き残るために、死体の山に隠れることもありました」
さらに、ロシア兵がネパール人を盾にすることも…

ダワー・タマンさん
「前線から下がろうとすると、ロシア兵は私たちに銃を向け、『なぜ戻ってくるんだ』と怒鳴りつけました。死ぬまで前進しろと命令されるのです。私たちが虫けらのように殺されても気にもとめず、さらに多くの外国人を送り続けるだけでした」
戦闘を続ける中、タマンさんは負傷。その後、治療を受けていた病院から逃走したといいます。そして、モスクワのネパール大使館に駆け込み、去年8月、やっとの思いで帰国しました。