「これロシアからすると理想形」

アメリカのウィトコフ中東担当特使は先月CNNのインタビューに侵略してすぐの2022年にロシアが提案していた『イスタンブール協定』案を持ち出し、この枠組みをロシアとウクライナの和平合意を成立させる指針として活用していくと語っている。

『イスタンブール協定』とは…
(1)ロシアが実効支配するウクライナ東部の完全割譲
(2)ウクライナ軍を5万人に縮小(今年1月時点、88万人)
(3)西側諸国に軍事支援を求めない
(4)NATO加盟を断念

戦後アメリカの外交・防衛を専門とする慶應の森教授は言う。

慶應義塾大学 森聡 教授
「ウィトコフが言っているイスタンブール協定を基礎にというのはロシア側が元々言っていることでそれに乗っかった形になってますよね。(2)(3)はまさに安全の保証の話で、こういう形になったら、それはウクライナの要求ははねるということになる。それにサウジで行った1回目の高官協議の時には、大きく言うと3つの柱があって1つは両国の大使館の復活、もう1つはハイレベルの高官協議の復活、そして3つ目は経済関係強化に向けて検討・模索するという経済制裁解除に向けた話をしている…トランプがロシア寄りだということ」

因みにウクライナ側の要求とは、ゼレンスキー氏が言う「安全の保証のインストラクチャー(基盤)が必要」に基づく『安全の保証5項目』であり…
(1)ミサイル防衛システムの増強
(2)国境沿いにミサイル基地設置
(3)ウクライナ軍再編成
(4)軍産業への投資
(5)欧州の平和維持部隊(アメリカの協力も不可欠)
『イスタンブール協定』とは真逆だ。

筑波大学 東野篤子 教授
「ウクライナは交渉相手ではない。今はロシアだけが交渉相手というアメリカにとって『イスタンブール協定案』はスタート地点なんだと…。ウクライナに丸裸になれという…。割譲だとか縮小だとか…。忘れてはならないのが4番目。NATOの加盟は諦めなさいと…。このまま弱い国でありなさいというのがこの協定案。これにアメリカが乗ってるというのが現実…

防衛研究所 兵頭慎治 研究幹事
「ウィトコフさんがこれを言うのは驚き。かなり抱き込まれている。これロシアからすると理想形なんです。(中略)前任のケロッグさんはこういうこと言わなかった。ウィトコフさんはプーチン大統領と長時間会談してるので、おそらく抱き込まれてしまったんだと…」

3月中にもトランプ・プーチン会談が実現という見方もあるようだが、心配は募るばかりだ。

(BS-TBS『報道1930』3月3日放送より)