「勝手に大人は頼りにならないと思っていた」 大人を頼らなかった少年
少年は周囲にSOSを発する事はなかったのか。周囲を取材すると少年から間接的に虐待について聞いていた同級生の親がいた。
同級生の親
「小学生のころに、何度かお父さんに叩かれた、殴られたまではいかないと思うんですが、叩かれたということは私の子どもを通して聞いていた」
「何があったのかということをもっと深く聞いて、防ぐことができる部分もあったのかなと」

児童相談所は少年が中学3年の頃、親とのトラブルで警察で話を聞かれた際に「4、5年前に叩かれたことがある」と話したため、警察から児童相談所に通告が行き対応していた。このときは半年間見守りを行ったものの「家族関係は良好になった」として対応を終了。
その後、事件の数日前に父親から児童相談所に連絡があり「子どもとの向き合い方に悩んでいる」という相談を受け、事件の2日前に両親と少年3人で面談。両親と少年、それぞれ個別に聞き取りを行ったが、事件につながる兆候はなかったという。両親のいない場で、少年に「今悩んでいることはないか」と尋ねると。

相模原市児童相談所 藤田信子課長
「(少年は)『今は困っているようなことはない』と」
少年が両親からの虐待や悩みを語らなかったことについては、苦しい思いを抱えている。
相模原市児童相談所 藤田信子課長
「やっぱり語っていただけなければ、こちらではなかなかそこについて入っていくことができませんので、もうそこまでの覚悟とかをしているのであれば、遠慮なく正直に話してほしかったというのが、こちらとしての思いです」
なぜ少年は周りに頼ることをしなかったのか?
法廷では祖母のこんな調書が読み上げられた。「かわいそうで仕方がない。ここまで追い込んで事件を起こさせてしまった」。祖母がそう思っていたことを知った少年は“驚いた”という。
少年:すごく驚いたというか、そういう人が親族にいるんだなと思った。勝手に大人は頼りにならないと思っていた自分を恥ずかしく思う気持ちがあります。
周りの大人に頼るという発想自体が、まったくなかったというのだ。
一方の検察側は、少年への虐待の目撃がないことや、あざがあったなどの物証も残されていないことから、法廷で少年が話した虐待・ネグレクトについて「誇張だ」と指摘した。
検察は「彼女と3連休を過ごしたいという目先の利益を優先させた。一連の犯行は、自己中心的な性格が招いたもの」として懲役10年以上15年以下の不定期刑を求刑した。