■賞味期限が“3年前”の粉末コーヒーが売られていた!
この日、一番古い商品は賞味期限がなんと3年前、2019年3月の粉末コーヒー「ネスカフェ・ゴールドブレンド」だった。手に取ると、正直不安がよぎる。
ネスレ日本のホームページには、コーヒーについて「賞味期限内であっても、開封後は1か月をメドに」、さらに、賞味期限切れの商品については「お客様のご判断のもとお願いいたします」とも明記されている。店としては信頼できるところから仕入れ、商品の状態については自分でも飲み、確認しているとのことだ。

■リスクがあるのになぜ売るの? “廃棄されてしまう食品にもう一度スポットを”
賞味期限切れ商品を販売をすることは、万が一のことが起きたときには店の信用にかかわる一大事であることは間違いない。それでも、「サンキューマート」ではなぜ賞味期限切れ商品を売るのだろうか。
「サンキューマート」の1店舗目は千葉・京成大久保店。3年前に開店したこの店を皮切りに全3店舗を任されている布施圭祐さん(35)はコンサルタントやホテルマン、秘書などを経験してきた。
中央卸売市場で働いていた時に「賞味期限間近とか、期限が切れちゃった商品があるんだけど扱ってみない?」と声をかけられ、「時代にあっているし、面白そう」と思い開店。店のコンセプトは“助け合い”。商品を安く買いたい人と、余らせてしまった人を助けられると思った。さらに、個人的な思いもあったという。
布施さん
「子どものころ親が離婚して、母方からネグレクトを受けたんです。疎外感、仲間外れ。期限切れってそんな側面もありますよね。自分を投影する、とまでは言いませんけど、そのままでは廃棄されてしまう食品にもう一度スポットをあてられる。そんな思いもあるんです」
■マイナスイメージを持っている人に知ってほしいこと
かつては賞味期限切れと聞いてマイナスのイメージを持つ客も多かったそうだが、安全性について質問されると、賞味期限切れと消費期限切れの違いなどを丁寧に説明した。そうしていくうちに最初はけげんな顔をしていた人がリピーターとなり、「食べてみたら美味しかった」「また買いたい」と、選択肢の一つに考えてくれるようになったという。
今では生活圏外から来店する人も増えた。根強い常連さんや小学生の口コミパワーも心強い。今年は値上げのニュースが何度もあり、追い風になっている。
布施さん
「リスキーな商売なのでマイナスからのスタートでした。賞味期限切れにマイナスイメージを持つ人も多いと思いますが、一度興味を持ってみてほしいですね。賞味期限が切れたからといって、すぐ食べられなくなるわけじゃないんです。消費期限切れはアウトですけどね。理解してくれるお客さんも増えて、『ありがとう』と言われると続けてきてよかったなと思います」


葛飾区保健所では「賞味期限が切れている食品を食べる場合、味だけでなく包装や食品の状態にも異常がないかチェックしてほしい。特に、パックなどの包装が膨張していたり食品が湿気っていたりすると、菌が繁殖している可能性があるので食べない方がよい。普段購入している商品との違いがないか、確認しながら食べることが大切」と注意喚起している。
10月は「食品ロス削減月間」。
身近にある食品の賞味期限と消費期限を確かめて計画的に買い物をしたり、捨てる前に「まだ食べられるかな?」と考えるようにすれば、食品ロス削減に少し貢献できるかもしれない。