ドレッシング10円、ボトルコーヒー20円、思わず二度見してしまう価格の商品が並ぶ店が東京・葛飾区にある。値上げのニュースばかりが続く昨今において、いったいなぜこの店はこんな安値で販売できるのか?

■安いのに…最初はクレームも「食べても大丈夫なの?」

「お店で宝探し体験しませんか?」
通行人の目を引く手書きのポスターが商店街の一角にある。

「サンキューマート」新小岩店は10坪の店内に商品がぎっしり並べられ、1日の来客数は500~800人ほど。お宝目当ての客があふれ、すれ違うのに苦労する。お宝はすぐ見つかるだろう。なぜなら、破格の値段の商品がそこかしこに並べられている。

安値の理由は、段ボールに掲げられた文言を読めばすぐわかる。

「賞味期限が切れています」

賞味期限切れの商品は注意喚起している

この店では“食品ロス削減”を呼びかけ、賞味期限が切れた食品を取り扱う。賞味期限切れ・間近の商品は店全体の4割程度だが、その他の商品も含めてとにかく安い。

賞味期限切れ。そう聞いて、不安を感じた人もいるかもしれない。
3年前、千葉県で1号店を出した当初は…

「こんなの食べられるの?食べても大丈夫?」
「売るのは違法じゃないの?」


「食べたらお腹を壊した」とお金を要求されたり、“貧困ビジネス”と揶揄されたこともあった。購入もしていない人から保健所に通報されたこともある。店によると、賞味期限と消費期限の区別がついていないことも批判の背景にあったという。

■賞味期限と消費期限の違いって何?

賞味期限と消費期限は、どちらも食品を製造・加工した企業など「製造者」が決めている。

【賞味期限】=長期間保存できる食品に表示されている「おいしさなどの品質が保たれる期限」
→即席めん類・缶詰など

【消費期限】=品質の劣化が早い食品に表示されている「食べても安全な期限」
→弁当・惣菜など

消費者庁食品表示課の「加工食品の表示に関する共通Q&A」によると、「消費期限を過ぎた食品は食べないように」、賞味期限については「賞味期限を過ぎた食品であっても、必ずしもすぐに食べられなくなるわけではないので、それぞれの食品が食べられるかどうかについては、消費者が個別に判断する必要がある」と書いてある。



つまり、賞味期限切れの食品を売ってもそれだけで罰せられることはないのだ。食品衛生法では、消費者に何らかの健康被害が発生した場合には回収命令が出される。その命令に従わないと3年以下の懲役、または300万円以下の罰金、もしくは併科とされている。

葛飾区保健所・生活衛生課食品衛生担当係によると、販売する際、「賞味期限からあまりに逸脱している場合や、衛生管理に問題があると考えられる場合は、店舗に立ち入りし指導を行う」とのことだ。