発掘に立ちふさがる行政の壁

山口初代代表は、志半ばで10年前に亡くなった。意志を引き継いだ井上さんは、日本政府に対して調査を求めたが、政府は、遺骨が坑道のどこにあるかわからず、調査は「現実的に困難」だとつっぱねた。

井上洋子 共同代表
「骨の一片でも私たちが見つければ、国はやらざるを得なくなると思っています。なんとかそういう状況を切り開いていきたい」

「刻む会」は、埋められた炭鉱の入り口・坑口の場所を調査で突き止めていた。そして2024年7月、民間の手で坑口を掘り起こすことを決め、寄付を募った。3か月で市民から1200万円以上が集まった。

だが、問題が浮上した。坑口のある土地は、戦後の混乱で所有者がはっきりしない。井上さんは、本来、宇部市が登記すべき土地であったとして、市に工事の許可を求めたのだが…

井上洋子 共同代表
「宇部市長はいらっしゃらないんですか」
「市長さんともよくご相談されて、返答をいただきたい」

市担当者
「しっかり確認させていただきます」

篠﨑圭二宇部市長は「使用許可を出せる状況にない」と回答し、問題の解決に踏み出そうとはしなかった。