「ライオンの隠れ家」と発達障がいの描き方

田幸 「ライオンの隠れ家」(TBS)は、登場人物をしっかり作り込んで、この人だったらどう考えるだろう、何て言うだろうという、役柄の気持ち優先で作られている。それによって展開がどんどん変わっていくのが魅力的な作品でした。
 
発達障がいのある役を演じた坂東龍汰さんのお芝居が、ナチュラルですばらしいというところも注目されました。坂東さんは、実際に発達障がいの人の専門塾に通って一緒に過ごしたそうです。役づくりですごいなと思ったのは、いろいろな人と交流したけれど、誰か特定の人を参考にせず、ステレオタイプにしないことを目標にしたという点です。SNSでも「この視線や動き、うちの子そっくり」といった書き込みが結構あって、やはり坂東さんの研究と、コンセプトの持ち方が、絶賛される役作りにつながったんだと思います。

プロデューサーの松本友香さんにインタビューしたときに興味深かったのは、発達障がいに対するドラマの描き方がここ10年で変わったという話でした。

2004年に「光とともに… ~自閉症児を抱えて~」(日テレ)というドラマがありましたが、そのときはまだ世の中にこういう人がいますよと紹介するフェーズでした。こういう人がいると知ってもらうため、あえてステレオタイプな描き方になっていた。

それが、世間に浸透したことで、もうステレオタイプな描き方はしなくていいよねという段階に入ったのがここ10年。発達障がいの方を特別な存在として真ん中に描くのではなく、あくまでも登場人物の一人、世界に生きている一人として描くのがこのドラマでの描き方です。今の療育のあり方、家族とのかかわり方、生活の仕方も変化していて、そのアップデートされたありようをリアルに描いているのが、すぐれたところだと思います。