小林と鈴木の東京世界陸上代表入りの可能性は?

大阪の走りで小林は、日本陸連が決めた東京世界陸上選考基準を満たしたが、代表入り確実とまでは言えない状態だ。現状ではJMCシリーズ・シーズンⅣ(23年4月から25年3月)の優勝者が最優先で選考される。大阪の結果では鈴木がトップに立ち、優位なポジションにいる。ただ昨年1月の大阪日本人トップの前田穂南と、昨年3月の名古屋ウィメンズマラソン優勝の安藤友香(30、しまむら)にも可能性がある。

シリーズⅣ優勝者に続く選考基準が、今回の大阪、3月の東京マラソン、3月の名古屋ウィメンズの選考レース3大会で、東京世界陸上標準記録を破った選手たちだ。3人以上が標準記録を破った場合は、“強さ”を感じさせた選手2人が選考される。“強さ”の基準は明記されていないが、五輪入賞者を逆転した小林は、かなりのアピールができたと言えそうだ。

しかし厚底シューズの登場以来、女子マラソンも高速化が進んでいる。東京と名古屋で2時間20分を切る記録が出る可能性は十分ある。そのときに小林が選ばれるかどうかは何とも言えない。

小林自身も、代表のことは現実的には考えていなかった。

「気持ちとしてはマラソンで、世界の舞台で走りたいという目標で入社しました。その気持ちでここまで頑張ってきましたが、自分の成長に精神面の成長が追いついていません。精神面はトップ選手の方たちと違うな、と思う場面がありますね。自分も気持ちが強くなりたいのですが・・・」

入社後の小林は周囲も本人も驚く成長だったが、そういった伸び方をしたときは、一度調子を崩すと立て直しに時間がかかるケースが多い。河野監督は「狙って出しているのではなく、成長過程の中で結果を出している。一度、地に足を付けて考えないと、次のレベルに行くのに時間がかかる」と、伸び悩むケースにも言及した。

だが小林の場合、市民ランナー的なポジションから実業団競技生活をスタートした点が、過去のエリート選手と違う点である。走ること自体が好きで、故障が少ないことも加わって、「練習を積み上げられる」(河野監督)ことが特徴である。回転数が1分間に220歩のピッチ走法も、大きな武器になると河野監督は評価する。実業団2戦目が東京世界陸上になったとしても、小林は自分らしさを見失わずに準備ができるだろう。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)