人間の体の中は土とそっくり。歴史の長い国から学ぶ

東京のほかに加藤氏が生活の拠点を置くのが千葉県鴨川市にある「鴨川自然王国」。夫の藤本敏夫氏が40年以上前に設立し、都市部の住民が農村に通い、循環型農業を実践するというライフスタイルをいち早く提案した。2002年に夫が亡くなった後は、加藤氏が引き継ぎ、現在は次女で歌手のYaeさんとその家族が中心となって運営している。

定期的に行われるイベントでは鴨川の里山で育てられた野菜や穀物などが販売され、都市部や地元から集まった人々が、産業化されていない自給型農業の成果を楽しむ。鴨川の山深い場所にも関わらず、様々な人が自由に集まり、フェスさながらの雰囲気で収穫の喜びを分かち合う。鴨川自然王国の取り組みを通して加藤氏が伝えたいこととは。

加藤登紀子氏:
私がよく言ってるのは「あなたが土ですよ」って。つまり人間の体の中は土。そこに食べ物が入って、酵素とかバクテリアが消化してエネルギーに変えてくれたり、活動してるんですよ、体の中って。それは土の中の活動とよく似ている。結局は命として生きてる限り私達は土のようなものです。土なんか関係ないよって言っても、あなたの体の中は土とそっくりなんです。

自給率を上げる一番の近道は自炊ですね。自分で料理をするんですよ。わかっているものを知っている人から買う。自分でご飯を作って食べてみると、サステナブルっていうことも、体が土なんだっていうことも何となく体感できるんじゃないかな。

――我々はサステナブルの原点に戻らないといけないんだということを教えていただきました。

加藤登紀子氏:
この番組もSDGsっていうことなんですけど、表題の立て方みたいなものが、やっぱり目線が経済成長という先進国的な位置にいる目から見ているところがあって、発信する場所が高い目線で言っているっていうのがちょっと気になるな。

Developing country、途上国という言葉はそろそろ使うのはやめた方がいいかな。今私も会話の中で使っちゃってるけど、アフリカとかアジアとかDeveloping countryと言われているところは歴史の長い国なんです。歴史の長い国と歴史の短い国が今、せめぎ合ってる。アメリカは最も歴史の短い国と言ってもいいんだけど、歴史の短い国は問題を単純化しやすいじゃないですか、概念的にも。そこから出てきた理屈っていうのが、一律か一つのセオリーで全世界を一つにしようとするみたいな。

100年、200年を振り返ると先進国ばっかりが活躍してきた歴史になるんだけど、それより前はもっとアジア、アフリカが原点だったりしてるでしょ。もっともっと古い時代からの人間が培ってきたもの、歴史の長い国から学ぶっていうのは環境問題の中では必要じゃないかなって思います。

(BS-TBS「Style2030賢者が映す未来」2024年12月15日放送より)