報道番組の『情報番組化』にも課題が・・・
一方で課題は選挙期間中の報道にだけあるのではない。兵庫県知事選挙においてテレビのあり方が批判や議論の対象となった主な要因は、告示前の斎藤知事や告発文書問題の報道の伝え方と伝わり方にあったと考えている。
MBSの夕方の報道情報番組においても今年の春ごろから文書問題を取り上げ、特に告発した元県民局長が亡くなって以降、頻度はかなり上がっていった。毎回番組の編集長やスタッフ、出演者でかなりの議論をしてのぞみ、その中で、告発が公益通報にあたるかどうかや、知事の下した懲戒処分のタイミングは適切だったのかといった問題の本質にしっかりと焦点を当てようとシフトして伝えてきたつもりだ。
ただ一方で伝わり方としてはパワハラ疑惑やおねだり行為のほうが相対的により多く伝わったのではないか。これは弊社の番組に限らず情報番組の1つの特性なのだが、生で記者会見や百条委員会の様子を時間的にも長く取り放送、それぞれの事例を細かに紹介することで視聴者にとって「問題行為を重ねる知事が県政を混乱させている」という印象が色濃く残る結果を招いた可能性が高い。
また視聴率の観点からも「パワハラ」「おねだり」というワードに引きずられてしまう面はなかったか。多くの報道番組が情報番組化し、「わかりやすさ」「キャッチー」さを追求するなかで、その弊害が前に出てしまうケースがある。つまり、この選挙戦前と選挙戦中の報道の伝える量と伝わり方の質の差が、「テレビの伝えていることは間違いでネットに真実がある」と多くの人が感じる原因となったと推察している。