選挙期間中のジレンマ 報道機関が抱える積年の課題
街頭やネットでの盛り上がりに比して、今回の兵庫県知事選挙でテレビは十分な報道ができていただろうか。MBSでは選挙が告示されて以降、関連の短いニュースに加え各候補者の主張を同じ秒数に揃えた、いわゆる選挙企画VTRを放送した。
一方で、斎藤知事の当選を目指すためにと立候補した立花孝志候補が発信した元県民局長の私的な情報や死因の根拠については扱わず、選挙戦終盤に22人の地元首長が稲村氏を支持すると表明した記者会見を取材はしたが報道はしなかった。
現実に起きている選挙戦のモメンタムを捉えてニュースにするという点で十分であったかは改めて問わなければならない。公職選挙法の公平性、放送法上の中立性を担保する必要は当然ある。ただその法の遵守をある種の建前にしているが、政党や視聴者からのクレームを避けたいという本音、潜在意識が働いてなかったか。
結果、テレビでは選挙に入ると報道する機会や分量が減ってしまう面がある。これがテレビでは有権者が投票する際に必要かつ有益な情報が、欲しいタイミングで十分に提供されないということにつながっている。選挙報道に携わった者であれば少なからず抱いてきた葛藤であり甘えであり、長年の課題ではないだろうか。