石破総理へ「もっとやるべきことはある」 野田代表へ「野党まとまって政権交代を」

政治改革の議論についての見解を伺うと、言葉少なげに、丁寧に慎重に答える細川氏だったが、饒舌に語ったのは石破総理について、そして野田代表について。そこには「自分だったらこうするのに・・」という野心のようなものが滲み出ていた。

ーー当時、日本新党の1期生だった野田佳彦さんが立憲の代表になり衆院選で政権交代を訴えました。今は政権交代のチャンスと言える状況でしょうか。

それはチャンスだと思いますね。何よりも大事なことは政権交代でしか変えられないんですよね。日本の経済も沈滞してるがそういう状況を変えるのは何によって変えられるかっていうと、やっぱり政権交代なんですよね。

日本新党ができて8党の連立ができて、だいぶ世の中変えられた部分もありますが、やっぱり今のこの状況を変えるためには政権交代がやっぱり一番大きなきっかけになると思いますね。世界どの国を見たってやっぱり政権交代で世の中変わるんで私は、ぜひ野田さんに頑張ってもらって、政権交代してもらいたいと思いますけどね。

ーー当時石破さんは政治改革実現のため宮沢内閣不信任案に賛成しました。本来改革マインドがあるはずですが、どうご覧になっていますか。

そうですね。やっぱり私は石破さんもうちょっと期待してたんだけど、何言ってんのかよくわかんないんですよね。もっとやることたくさんあるんですね、政権としてね。

例えば核兵器禁止条約のオブザーバー参加の話だって、石破さんは核の傘があるからどうのこうのって言ってるけど、ドイツだってオブザーバー出してるんですよね。予算も何もいらない、すぐできる話じゃないですか。死刑廃止の話だってそうですね。夫婦別姓の話だってそうですね。すぐできる話を、私ならすぐやりますね。それで支持率すぐあがりますよ。

日本新党も3年で解散するって言って、3年目に解党しちゃったんですよ。一つの内閣で本当にわかりやすいターゲットを置いて、それをいつまでにやるってことを明確にして、やっていくっていう手法がね、やっぱり必要だと思うんですね。

ーー当時8党をまとめあげたのは相当難しかったのではないですか。

難しいですよ…本当に難しい。

ーーそれでも野党は当時のようにまとまって政権とったほうがいいと思いますか?

それはもう絶対取りに行った方がいいと思います。だから本当に国民(民主)なんか何してんだと思っちゃうんですよね。国民(民主)も103万円だかなんかの話をしてるよりね。それは野党で政権を取りに行った方がそれは日本を変えるためには、絶対その方が大きなプラスだと思いますけどね。目先でどうやって得点を稼ぐかってことばかり考えてるもんだからなかなかそういう方向にならないんだけど、政権とりにいったほうが遥かに大きなプラスだと思いますけどね。その辺の大きな戦略をやっぱり描く人がいないのかなあ。

ーーもどかしい感じで今の政界を見ているんですね。

見てますね。へへへ。

ーー自分ならこうするのに、と思うのでしょうか。

そうですね。だって十分それができる話なんですよね。8党の連立よりよっぽど組みやすいんじゃないですか。そりゃあ(社会党党首の)村山さんや(さきがけ代表の)武村さんを抱え込んでやるよりはよっぽどやりやすいですよそりゃ。

ーー当時のようになぜできないと思いますか。

もう本当にそう思います。「この指とまれ」ってやればいいんですよ。我々だって8党で決してまとまってたわけじゃないよ。いきなり全面的に政策広げてですね、これで一緒にやりましょうって言ったわけじゃなくて、政治改革だけ旗立てて、これでやろうっていう「この指止まれ」をやったわけですね。なんでそういうことできないのって思うんだけど。

細川氏は当時の石破総理(3回生)のことを良く覚えているそうだ。その時は政治改革に邁進していただけに総理になった後の石破氏には”期待外れ”だったと落胆していた。「自分だったら、支持率回復のためにどんどん政策を進めるのに」と話す。

石破内閣と細川内閣の最大の違いは「支持率」だったと思う。

細川内閣発足直後93年8月に実施したJNNの緊急世論調査では支持率が77.6%。(ちなみに政権交代「良かった」は83.1%というのが当時の情勢だ)政治改革関連法が成立した94年1月末に実施した世論調査では内閣支持率は77.1%という驚異的な数字だ。

一方、石破内閣は発足直後の10月51.6%、直近12月は42.1%なので、細川内閣とは30%以上違う。政策の推進力が全く違う。

「ガラス細工」と揶揄された8党派連立内閣だったが、それをまとめることは「本当に難しかった」としみじみ振り返る姿は印象的だった。その上で、細川氏は「それでも野党は固まって政権交代をめざすべき」だという言葉は、いまの野党議員にどう映るか。

「30年前の宿題をぜひここで片付けてもらいたいと思いますね」

政治改革をめぐる与野党の議論はいよいよ来週大詰めを迎える。元総理の言葉はいまの国会議員に重くのしかかっている。

聞き手:TBS政治部デスク 室井祐作