■犯行「後」の足取りは…
事件現場の駅の利用客は、出口を出たあと住宅街へ向かったり、スーパーやコンビニエンスストアなどに立ち寄ったりする人が多い。
一刻も早く現場から逃げようとしている犯人は違う動きをしているのではないか。
そう考えた捜査班は、通行量の多い大通りで、白っぽい服を着た人物が車に乗る様子が小さく写る防犯カメラの映像を見逃さなかった。
一瞬だが、手を挙げているようにも見える。
「タクシーに乗ったのか?」
犯行時、男は黒い服を着ていたが、実は駅を出る間際、ショルダーバッグの肩掛けを外そうと頭をくぐらせ着替えようとするような動作が防犯カメラに捉えられていたのを、捜査員は見抜いていた。逃走犯が服を着替えるのはよくあることだ。カメラに写った服の色にはとらわれなかった。
■犯行「前」の足取りは…
一方、犯行前の足取りを調べていると、赤坂見附駅近くにある男性の勤務先の周辺に、男がいたことがわかった。
さらに時間をさかのぼると、男は、事件当日の午前中、新宿駅にあるバスターミナル付近をうろついていたことも判明。
「もしかしたら、遠方から高速バスで来たのか?」
捜査員がそう思ったのは、過去、別の事件で、犯人が高速バスを使って都内に来ていたことがあったからだ。経験に基づく勘が働いた。
「仮に遠くから高速バスで東京に来たなら、犯行後も遠くへ逃げ帰るのではないか。それならば、新幹線に乗るかもしれない」
現場の白金高輪駅から最も近い新幹線の駅は、品川だ。
そして品川駅の防犯カメラ映像を確認すると、予想は的中。
タクシーから降りる男の姿があった。
品川駅で、静岡までの切符を買ったことも確認できた。