■静岡の自宅を突き止めたが…
男は、静岡駅で改札を出たあと、どちらへ向かったのか。
犯行後、男が静岡駅に着いたのは事件当日の午後11時頃。
「時間も遅いし、静岡駅でもタクシーに乗ったのでは?」
そう考えた捜査員がタクシーの行方を追ったところ、住宅街へ進んでいき、事件発生から2日経つ前に、家を突き止めた。
しかし、人の気配がない。付近の防犯カメラを確認すると、犯行時とは違う大きな荷物を持って、事件の翌朝、自宅を出て行く男の姿が映っていた。
■大きな荷物を持ち出かけた男は沖縄へ
「この荷物の大きさは、どこか遠くへ行く」
「土地勘のあるところへ向かうに違いない」
捜査員は、犯人の気持ちになり、自然とそう考えた。
そして事件の翌日自宅を出た男が、静岡駅から新大阪行きの新幹線に乗ったことが確認できた。
事件から2日ほど経つと、別の班の捜査で、花森弘卓容疑者(25)が浮上し始め、沖縄の大学に通っていた経歴も判明した。
花森容疑者が静岡駅で買った切符の料金から、名古屋付近で降りることが予想された。
「中部国際空港から、土地勘のある沖縄に行くのではないか」
捜査員の読み通り、名古屋で新幹線から飛行機に乗り継ぎ那覇空港に向かっていた。空港到着後、小走りに出口へ向かう花森容疑者の姿が防犯カメラに写っていた。
「急いで何かに間に合わせようとしている。空港から出るバスではないか?」
時間を調べると、名護市行きのバスに飛び乗っていた。
やはり土地勘のある大学前で降車し、事情を隠して知人の家に滞在していた花森容疑者。
28日午前、犯行時に自身が負った火傷を隠すためなのか、サングラスをつけ、長袖を着てベンチに腰掛けていたところ、警察官に声を掛けられ身柄を確保された。
犯行から80時間ほどの追跡劇だった。
捜査班が解析した防犯カメラの映像は251台だが、抽出したのはあわせて25時間分の映像だ。
映像の全てを見ていたら時間がかかってしまうが、捜査員の経験と“読み”をもとに分析したことで、花森容疑者の逮捕に至った。
ある捜査員は、「AIなど最新技術も利用するが、それだけには頼らない。捜査には、捜査員1人1人の判断力が必須だ」と語った。


















