「知るより感じる」 モノクロ写真で伝えたいこと
――続いてお話していただくテーマですが、二木さん、何番でしょうか。

二木あい氏:
4番の「質の高い教育をみんなに」というところです。
――この実現に向けた提言をお願いします。

二木あい氏:
「知るより感じる」です。

――写真を拝見しましょう。二木さんが撮られた?
二木あい氏:
自分が写っている方はカラーで、より自然の本当の海の姿っていうのを体感してほしい、感じてもらいたい。自分が撮っている写真はモノクロが多いんですけども、モノクロだったら、なんだろうっていうワンダーが起こるというか。
今何でもそうですけど、全部早くパパッていく。ちょっとでも立ち止まって、海の中にある物語を語り合ってもらいたいというか。私は撮っているときはできるだけ透明の状態になって彼らが伝えたいことを、彼らの代わりにシャッターを押してそれをそのまま陸上に持ってきて見ていただく。皆さんが写真から何か感じたりするときに初めて会話が成立するんじゃないかなっていうところがあるので、自分はできるだけいない状態で。
――これは2枚ですね。

二木あい氏:
実はこれはクラゲとプラスチックの袋なんですけど、どっちがどっちだかわかりますか。右がプラスチックの袋なんですけど、プラスチックだってわかっていても、海の中だと半透明だったり透明で、太陽の光を通してキラキラしてすごくきれいに見えるんです。
その存在をわかっている私でも、ワーって近寄っていってしまうので、そりゃあその存在自身知らない生き物たちはクラゲだと思って食べちゃうよねっていう。こういう問題の話も、どれだけ私達が悪いんだって言ってしまうと、「私そんなゴミ捨ててないし」ってなって、シャッターが閉まっちゃうんですけど、「これは何なんだろう」って、「いや実はね」って言った方が、開いた状態でそれを聞くからより深く入るんじゃないかなっていうのもあります。
知識のことが教育だっていうふうに思われがちだったりすると思うんですけど、それだったら本当に机上の空論で終わってしまう。なので、まずは感じて言葉じゃないところというかより深いところで何かを感じ取って、そこから始まるところがやっぱり一番大事なんじゃないかなって思います。自分(私)の活動が種であって、その後皆さん1人1人がお水をやるなり肥料をやるなり何かのきっかけで何かをしていって、自分の中で何かお花が咲けばいいなって。そこがその人が何か変わるときなのか、何かが始まるときなのかっていう…。
――今の教育の現場では、海に連れて行くとか一工夫しないと難しいかもしれませんね。
二木あい氏:
装備ガチガチで行ってしまったら、レジャーのそれこそ私達の遊ぶ場所、私達のものっていうところになっちゃうと思うので、何かそうすると触れ合いじゃないっていう。でも、元々私達は自然と一緒に生きてきたり、全てに神様がいたり、全てに精神があってっていうのは日本の考え方というか、私達の体の中にDNAとして深く刻まれているところなので、実は私達は絶対上手なはずなんです。でも、この現代の生活で忘れてしまったり、より簡単な方に、より便利な方に行ってしまう。本当に一番大事なところをどこかに置いてきてしまったんじゃないか…。
――小学校で子どもたちと何かするとしたら、どんな授業をやりますか。
二木あい氏:
もし海辺が近いのであれば、まずはしゃべらないで、裸足で海辺の浅いところを歩いてもらう。
――しゃべらないで?
二木あい氏:
触覚。裸足で砂を踏む足裏の感じ、水がやってきたときの水が触れていく感じっていうところ。正解、不正解っていうのは感じるっていうところにはないので、好きなように感じてもらっていいっていうのはありますし、それは日々の生活の中で何かあると思うんです。
毎日、通学路というか通勤路っていうのは何も見ずにその目的地、駅に向かっていくだけですけど、ちょっと見ると、何かお花が咲き始めていたり、太陽の光があってきれいな影ができているとかっていう美しさ、感じるものはそこら中にあって、それはどこかに行かないとないものではない。全部本当はあるっていうところ。
――SDGsのゴールまで何かやらなくちゃいけないっていう義務感があるんだけど、まずは自分の心と素直にやり取りしなさいと。
二木あい氏:
一番自分を大事にしなきゃいけないのは自分自身だと思うので、自分が思う以上にすごいポテンシャルがあって、すごい可能性があるので、それを始まる前から閉じてほしくないって思います。
――改めて二木さんが考えるSDGsとは何でしょう。
二木あい氏:
まずは自分とお話をして、自分にまずは優しくしてあげよう、自分をちゃんとケアしてあげるっていうところから始めてください。
(BS-TBS「Style2030賢者が映す未来」2024年11月24日放送より)