SDGs達成期限の2030年に向けた新たな価値観、生き方を語る今回の賢者は水族表現家の二木あい氏。世界の海を舞台に、自分が被写体または撮影者となって様々な形で表現を続けている。海と陸上の架け橋となるべく活動を続ける二木氏は、2020年から自然資源の保全とそれに関わる人たちを繋げることを目的とした環境省の「森里川海プロジェクト」に参加。ユニークな方法で海の大切さについて伝え続けている二木氏に、2030年に向けた新たな視点、生き方のヒントを聞く。

「海を守ろう」って何様やねん 人間らしいものは置いて海に入る

――賢者の方には「わたしのStyle2030」と題してお話しいただくテーマをSDGs17の項目の中から選んでいただいています。二木さん、まずは何番でしょうか?

二木あい氏:
14番の「海の豊かさを守ろう」です。

――この実現に向けた提言をお願いします。

二木あい氏:
「人間は地球の所有者ではない」というところです。

――我々の振る舞いが問題なのでしょうね。

二木あい氏:
海を守ろうっていうこと自体、強いものがやってあげるっていう感じだと思うんです。私達人間も同じ地球に住む一員であって、その一員として私達は何ができますかっていうところだと思うので、豊かさを守ろう、何様やねんみたいな。

――二木さんがウミガメの下に潜っている。この写真は合成じゃなくて本当ですよね。

二木あい氏:
本当です。しかも、これ日本の海、奄美大島です。

――どんなふうに撮られた写真なんですか。

二木あい氏:
もちろんプロの写真家さんがいらっしゃって、一緒に撮ったんですけど、海の中はしゃべれないので、本当にあうんの呼吸でいかないといけない。しかも私だけなく生き物も一緒にいるので、生き物が来たときにっていうのはあるんですけど。

海の中は陸上よりも振動が4倍速く伝わるところなので、こちらがちょっとでも何かドキッとしたりとか怖いとか、何かよこしまなことがあったりとかすると、それが全部相手に伝わってしまったり。

――伝わった瞬間…。

二木あい氏:
パッといなくなります。

――もう1枚写真が。手を繋いでいますか。

二木あい氏:
そうなんです。アリゲーターではなくて、ワニです。これは行ってすぐにガシッてつかんだわけではなくて、実は私、あの彼をマッサージしたんです。尻尾の先から始めて、足とか手の付け根のところもマッサージして。

これはキューバなんですけれども、2週間滞在していたので、ほぼ毎日会いには行っていたんです。マッサージをずっとして、すごく力が抜けちゃってる状態で、お駄賃の代わりに手を繋ぎましょうって言って手を繋いで写真を撮ってもらった。

海の中は彼らのおうちなので、そこを土足で踏み入るっていうことはせずに、ちゃんとそこは敬意を持って入っていってっていうのはあります。

――2人ともだらんとしています。やっぱり伝わるんですか。

二木あい氏:
伝わります。いくら怖いと思ったところでどうしようもないっていうのもありますし、死ぬときは死ぬときだと思っているので。向こうがアタックしたいと思ったら絶対前から来ない。もし食べようとするんだったら絶対私は後ろからやられるので、気づく前にお腹の中にいるので、それはそれでいいのかなと思って。

――潜っているときの二木さんの頭の中はどんな感じなんですか。

二木あい氏:
今の状況をそのまま受け入れているっていう感じだと思います。考えっていうのが実は一番邪魔だったりとかしていて、考えてから行動では遅い世界が自然の世界なので、一番人間らしいものは陸に置いて海に入る。