■「互いに高め合えるはず」見えてきた日中それぞれの長所と短所

成長著しいと言われる中国の建築設計業界ですが、ここ10年で空間デザインに対する感覚が変わってきているといいます。

「10年前、中国では質よりも、見た目のわかりやすい豪華さを重視する人が多かったんですが、最近では特に都市部で、日本のデザインに象徴される機能的で本質的なモノの良さを重視する傾向が強まってきているように感じます」

設計を依頼する中国人実業家の中には、日本的な「モノに宿る良さ」を求めて日本人建築家に依頼をしてくることも多いそうです。その期待に応えるためにも、はやりすたりが激しく、見た目ばかりを重視する中国の社会において、世代を超えて愛されるような息の長い建築を提案し、中国の人たちにもその良さを伝えていきたいと話します。

(中国人から屋根裏部屋を畳の空間にしたいと要望され鶴崎さんがデザインした和室)


鶴崎さんはキャリアを重ねる中で、日中それぞれの「仕事のやり方」の長所・短所を見つけました。

中国は挑戦と失敗を受け入れる土壌がある一方で、大雑把な計画で走り出したプロジェクトが途中で資金がショートしてしまい、止まってしまうという問題点が。それに対し、日本は大胆なチャレンジに消極的などの問題はあるものの、納期やコストに厳しく、緻密な計画に基づいてプロジェクトを進めるという長所があると指摘します。日中が互いに学ぶことで、高め合えるはずだと感じています。

■「東洋の美しさ、他の文化圏にも発信する建築設計を」

(鶴崎洋志さん北京にて)

2021年には独立し、建築家として中国で12年目を迎える鶴崎さん。これからの自身の将来についてどのような展望をもっているのでしょうか。

「日本と中国は国家間の関係など難しい面もありますが、デザインや価値観においては東洋的な美学を共有しています。私はこれから日本と中国どちらの感性も持っている建築家として、他の文化圏にも東洋の美しさを発信できるような建築設計に取り組んでいきたいと思っています」

JNN北京支局 室谷陽太