例えば、従業員50人以下の企業で働くA子さんの場合を見てみましょう。

【A子さん】
収入(パート):125万円
雇用保険:7500円
所得税:1万800円
住民税:2万8600円
手取り:120万3100円
※ファイナンシャルプランナー 塚越菜々子さんの試算

103万円を大幅に超えていても、実際かかる所得税は1万800円ほど。ここにまず一つ勘違いがあるのではないかということです。

そして、続くポイントは、「配偶者・扶養控除」ではないかということです。

例えば、年収1095万円以下の夫とその家族、妻も子も103万円以下の収入の場合です。配偶者控除と扶養控除の優遇が受けられるのですが、103万円を超えてしまうとこの控除が受けられなくなり、「世帯収入が減ってしまう」と思われ、働き控えをしているのではないかと考えられています。

しかし実際は「配偶者特別控除」というものがあり、この「配偶者控除」と同じ額の優遇が受けられるということなんです。加谷さんは、「パートも雇用側も、この『配偶者特別控除』というものを知らない人が多いのではないか」と指摘します。

経済評論家 加谷珪一さん:
『103万円を超えると、手取りが減る』
と言われてしまっているんですが、本人の所得税という観点で言えば、税金は払わなきゃいけなくなるのですが、手取りがマイナスになるわけではないんです。払った分の税金が得か、損かという話だけで、手取りがガクっと減るわけではないです。

では、何の手取りが減ることになるのか、例えば旦那さんのいる専業主婦や、学生さんがいるとします。この方々が103万円以上働いた場合、旦那さん側の税金、学生の親御さんの税金が高くなってしまうことがあり『世帯単位で手取りがマイナスになることがある』という話が少しごちゃごちゃになっているのです。

特に今、働き控えで問題になっているのが、この主婦の方々。配偶者特別控除というものによって実際には150万円まで働いても大丈夫なのですが、これがよく理解されずに『103万円を超えてしまうから、もうやめよう』と、事業者さん側も『このパートさん、103万円超えてしまうとまずい』と言って、不必要なシフトを組んでる可能性がかなりあります。そもそも複雑な制度が悪いのですが、もう1回確認して調べた方がいいのではないかと思います。

ホラン千秋キャスター:
お子さんの場合は、今まで言われていたように103万円を超えると控除が受けられなくなる?

加谷さん:
それはその通りです。

井上貴博キャスター:
この問題の核心は『103万円を超えると親の負担が大きくなることで、学生の働き控えが起こる』ということで、国民民主党は、最低賃金の上昇をもとに103万円の壁を178万に上げようとしていて、むしろ物価の変動や生活費などに応じた上げ幅の方がいいのではないでしょうか?加谷さんはどのぐらいの上げ幅がいいと思いますか?

加谷さん:
基礎控除の引き上げ自体は、私も含めて反対する人はそれほどいないのではないかと思います。問題なのはその金額です。基礎控除の額は本来物価で決めるべきものです。そこから計算すると、同じ期間で1.1倍ぐらい上がっているので103万円×1.1で113、4万円となります。

これを178万円まで上げると、103万円の問題も解決できる一方で、高額所得者も減税対象になるような大規模減税策に変わってくるんです。この金額がどの程度妥当なものなのかというのは、識者によって意見が分かれるところではないでしょうか。