“隠れハリス”はいなかった? トランプ氏の経済対策が刺さったか

藤森祥平キャスター:
一方でトランプ氏は、大統領経験者としては史上初めて刑事事件で起訴されました。しかも、4つの裁判を抱えています。
それでも“隠れトランプ”が多かったのか、“隠れハリス”はいなかったのか、いかがでしょうか。

樫元照幸 ワシントン支局長:
“隠れトランプ嫌い”がどれだけ伸びるかと思っていたのですが、伸びなかったということです。
たとえば南部の保守的な地域には、家族全員がトランプ氏を支持している一方で、女性の権利を大事にするハリス氏を支持したい“隠れハリス”の女性がいるのではないかということで、民主党は働きかけ、CMを打つなどしてきたわけですが、結果に影響を与えるような数に至りませんでした。
副大統領としてそれほど人気がないハリス氏を担ぎ出すことになりましたが、刷新感を演出しただけで勝てるほど、アメリカ大統領選挙は甘くないということです。
小川キャスター:
ハリス氏が候補となった当初は、初の女性で、しかも白人ではない大統領が誕生するのではないかという高揚感もあったように思います。
渡辺靖 慶應大学教授:
高揚感はあったと思いますし、私は女性がアメリカの大統領になる素地はあると思います。
ただ、今回の選挙戦でハリス氏は「女性である」と言いませんでした。言ってしまうと、かえって反発を買うかもしれないからということです。
本当は、その部分はもっと誇ってもいいことかもしれませんが、ハリス氏が前面に押し出せなかったところに、やはりまだアメリカの“ガラスの天井”はあるのかもしれません。

藤森キャスター:
アメリカの現状をみてみると、歴史的な物価高といわれています。
ガソリンの価格(1ガロン=約3リットルあたり)は全米平均で、2020年の約2ドルから、2024年は約4ドルと2倍になっています。
アメリカではガソリン価格は何よりも身近なもので、全米平均で1ガロン3ドルを超えることは大きな壁といわれているなか、一気に4ドルとなり、場所によっては5ドルや6ドルに上がった州もあったということです。
バイデン政権の物価高に対する懸念は、相当なものだったということでしょうか。
佐藤祥太 TBS経済部デスク:
世論調査の平均では、60%近くが経済運営は支持しないと答えていました。
コロナ後の巨額の財政出動や、需要の急回復にロシアのウクライナ侵攻も重なって、ガソリンも含む物価が跳ね上がりました。最大で9.1%ぐらい上昇したのですが、これは40年ぶりの水準です。物の値段が1割近く上がると、市民生活に直撃しますよね。
トランプ政権のもとでのコロナ対応でアメリカ経済が傷ついてしまったところがあり、それを立て直すためという側面もあったのですが、トランプ氏はそこで機を見るようなところがあります。「あれはバイデン政権の失策だ、ハリス氏もその連帯責任を」というような追及の仕方をしていました。
もとより経済対策が有権者の中での最大の関心事だったわけで、そこにトランプ氏の訴えが“刺さった”という言い方ができるかもしれません。