2019年7月15日 大通公園で市民と握手する安倍総理(当時)

■「政治家と市民が直接触れ合える唯一の場」
 安倍氏の銃撃事件や岸田前首相の襲撃事件が起きて以来、選挙の演説現場では厳重な警戒態勢がとられている。演説を聞くためには、聴衆は手荷物検査や金属探知機検査を受けたうえで、数十メートルも離れた場所に設置された柵の中に閉じ込められる。だが、選挙における街頭演説は民主主義社会において貴重な機会だと阪口正二郎早稲田大学教授(憲法学)は指摘する。

 「政治家と市民が直接触れ合える唯一の場」「ヤジやプラカードなどは表現方法として認めておかないと、世の中にはどんな人が困っていてどんな意見があるかわからない」

 今回、石破総理が札幌で街頭演説を行わなかったことによって、有権者は投票の判断材料を得られなかっただけでなく、石破総理の政治姿勢や自民党の政策に反対する人にとっては、意見表明する機会を失ったといえる。

■すすきの交差点ではスタンディング
 同じ日の午後5時ごろ。すすきの交差点で、市民ら10人ほどがスタンディングを行った。「投票に行こう」「ミサイルより笑顔で暮らせる日常を」などと書かれたプラカードをそれぞれ手にして道行く人に訴えた。

 その中のひとり、山口たかさん74歳は2019年の参院選で、2人の友人とともに年金政策を批判するプラカードを掲げようとして警察官に排除された。石破総理が札幌で街頭演説しなかったことについてこう語る。

 「屋内で支持者向けの集会だけやってもだめ。ふだん接点のない人の声を聞いたり、そういう人に訴えるのが街頭演説だし、それが選挙。逃げたと言われても仕方がない」

2024年10月18日 すすきので街頭活動をする山口たかさん