「今回は大いに勉強になった」


2023年6月。G7広島サミットを終え、内閣支持率が上昇したことを受けて最大の解散チャンスを迎えていた。与野党からも解散総選挙を警戒し、選挙準備を始める議員も出てきていた。ところが…
記者(2023年6月15日・総理官邸にて)
「今国会で解散はしないということでよろしかったでしょうか?」
岸田総理
「解散については考え…、今は、今国会での解散は考えておりません」
解散の可能性を完全否定したのだ。
この日の深夜、岸田総理は周囲に対して興奮気味にこう語ったという。
岸田総理(周囲に対して)
「解散権というのはこうやって使うんだなと、大いに勉強になった」
「最大の収穫は解散権をとっておくことができたことだ」
岸田総理からみれば、解散騒ぎの間に
・防衛費の財源を確保する特別措置法案やLGBT理解増進法案などの重要法案を相次いで会期内に成立させることができた
・衆議院の10増10減で難航が予想された選挙区調整を一気に進めることができた
というのは大きな成果だ、と考えたようだった。
解散カードを失うことなく、振りかざしただけで多くの成果を得ることができたと自信を深めたというのだ。ただ、結局、これ以降岸田総理が実際に解散カードを使うことはなかった。
岸田総理はこうした政局が好きだったようで、私が政府関係者から聞いた岸田総理のものとされる政局発言、ざっと挙げるだけでもこれだけある。
「博打を打たないと逆転はできない」(2024年1月、派閥の裏金事件による支持率低迷を受け)
「これは勝負だ。全部ひとりで決めた」(同時期、岸田派の解散や衆院政治倫理審査会への出席を相談なしに決めたことについて)
「俺も政治家として政策で意地は示してきたが、ここで一回身を引いて、『攻めの辞任』をすべきだと考えた」(2024年8月、総裁選への不出馬を表明後)