1094日間で残した“岸田語録”とは

退任、花束持つ岸田総理(2024年10月1日)

「3年間本当に多くの皆さんに支えていただきました。感謝の気持ちでいっぱいです。まずは今それに尽きます。ありがとうございました。お世話になりました」

10月1日。
総理官邸のエントランスで職員から花束を渡された岸田総理は、記者団に対しこのように述べたあと、普段は使わない中央の出入り口を通って官邸を後にした。

在職日数は戦後の総理大臣では歴代8位となる1094日。およそ3年間続いた岸田政権が残したものは何か。新しい資本主義、異次元の少子化対策、防衛増税…こうした主要トピックについてはすでに各所で解説されているため、私は特に印象的だった岸田総理の3つの言葉を紹介することで、掘り下げてみたい。

「今日(こんにち)のウクライナは明日の東アジアかもしれない」

「アジアの未来」晩餐会 総理挨拶(2022年5月26日)

2022年2月に起きたロシアによるウクライナ侵攻。直前まで日ロ電話首脳会談を行い、「プーチンがそこまでやるかなあ」と周囲に漏らしていた岸田総理にとっては大きな衝撃だったに違いない。しかし、そこから岸田総理は一気に舵を切り、G7による制裁の列に加わった。

2022年5月、ASEANなど各国の代表を招き、都内ホテルで開かれた「アジアの未来」晩餐会で岸田総理はこう語っている。

岸田総理(2022年5月26日「アジアの未来」晩餐会にて)
「『ウクライナは明日の東アジアかもしれない』ウクライナにおける力による一方的な現状変更は、世界のどこでも起こり得るものです」

ウクライナ情勢は、欧州のみならずアジアを含めて国際秩序全体を揺るがすもので、“対岸の火事”などではないという岸田総理のメッセージ。

岸田総理は、この言葉に「今日の」を加えて国際会議や首脳会談の場などで多用するようになり、その後、国際的に広まることとなった。

岸田総理周辺
「あの言葉はバズりましたよね。ゼレンスキー大統領からも感謝された」

岸田総理の周辺は、ロシアと袂を分かったことも「従来の安倍外交ではできなかった」と語っていて、こうしたウクライナとの連帯重視姿勢は2023年3月のウクライナ・キーウ電撃訪問、同年5月のG7広島サミットでのゼレンスキー大統領招待へとつながっていく。

日・ウクライナ首脳会談(2024年9月23日)

ゼレンスキー大統領(9月23日ニューヨーク国連本部)
「去年の広島サミットへの参加はウクライナにとって非常に象徴的かつ重要なことで、それ以降G7の会合にウクライナは参加できるようになった」

9月、最後の外遊として訪れたアメリカ・ニューヨークでゼレンスキー大統領と会談した岸田総理は、これまでのウクライナ支援への感謝として最高位の勲章を授与された。