鍵となった「センサーライト」の点灯状況

ここまで検察側の主張を退けた上で、なぜ「有罪」なのか。鍵となったのは「センサーライト」だった。

被害者の平山さんが向かおうとしていた知人女性宅には、人物などに反応するセンサーライトが設置されていた。そして、知人女性宅と被告の当時の自宅は、袋小路の中にあり、被告宅の方が“奥”にあった。

つまり、被告宅からT字路に出るには、女性宅の前を必ず通らなければならず、基本的にセンサーライトが反応することになる。そしてT字路と平山さんが殺害された現場は、極めて近い。

そして、平山さんが殺害される40秒ほど前にセンサーライトが点灯した。そして、その約17分前にもセンサーライトは点灯した。

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裁判官と裁判員は、この事実と、被告の“見張りのために玄関先まで出ていた”とする供述を照らし合わせて精査。「重大犯罪に及ぶ前の犯人が、袋小路内の住民=山本被告に不審に思われる危険をおかして、2回もセンサーライトを点灯させるなどというのは想定しがたい」=「センサーライトの点灯を生じさせた者は被告以外に考えられず、被告を本件の犯人とみるほかない」と断じたのである。

ドラレコ映像から導き出される犯人の動きから考えると、“山本被告が犯人であるなら、あと2回センサーライトが点灯していなければ不自然”という見方も想定され、この点は弁護人も公判で主張していたが、判決では「通行方法が駆け足であれば、点灯しないこともある。犯行前後の焦燥感を伴う移動だと想定されることを考慮に入れれば、センサーライトを通過する際に駆け足であっても特段不自然ではない」とされた。

そして、被告と、隣人女性および平山さんとのトラブルという動機面については、裁判官と裁判員は「山本被告や当時の被告の妻は、住宅ローンを組んで購入した自宅からの転居の検討を余儀なくされるほど、深刻な状況に追い詰められていて、些細なトラブルだとはいえなかった」として、殺害動機になり得るとした検察側の主張を支持。「(センサーライトの点灯状況に基づく)山本被告が犯人であるという推認を補強する」とした。

無実を訴え続けていた山本被告だったが、有罪判決を前にしても、身じろぎせず証言台の前の席に座っていた。

弁護側は控訴する方針で、裁判の舞台は大阪高裁に移る見込みだ。

(MBS大阪司法担当 松本陸)