前進・成長を続ける巨大氷河 膨大な氷の供給源
このように世界中の氷河が温暖化の影響を受けている中、大きくなりつづけているのがハバード氷河。アメリカ・アラスカ州とカナダにまたがる世界遺産「アラスカ・カナダの氷河地帯」にある巨大な氷河です。この世界遺産は世界最大級の氷河地帯で実に200を超える氷河があるのですが、やはり多くの氷河が後退を続けています。その中でハバード氷河は例外で、長さは120キロ以上あり、年々、前進・成長を続けています。
その秘密は、温暖化で溶ける氷や海に崩落する氷、つまり減る氷の量よりも、新たに供給される氷の量の方が多いからです。膨大な氷の供給源は、世界遺産エリアにあるセント・イライアス山地の氷原。そこは標高5000メートル級の山々に囲まれた世界最大級の氷原で、厚さ最大1000メートルもある氷に覆われています。
太平洋から吹く湿った風が周囲の高い山々にぶつかり、氷の素となる雪を大量に降らせます。ハバード氷河が温暖化に対抗できるのは、この大量の雪のおかげなのです。番組ではこの大氷原を今年6月に撮影しました。早朝、陽が昇るにつれ周囲の山々はバラ色に染まり、氷原は鏡のように輝きます。太陽と氷が生み出す絶景でした。
地球は、今や温暖化ではなく「沸騰化」しているとまで言われます。世界遺産となった氷河の絶景は、この沸騰化にどこまで抗していけるのか・・・少なくとも現在の姿を、番組は映像で記録し残し続けていくつもりです。
執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太














