■リザが何かできるようになると、その度にうれしくて泣いた

リザちゃんの部屋を案内してくれるイリーナさん

リザちゃんの部屋を見せて下さい、とお願いすると、イリーナさんは、頷いて松葉杖を支えに立ち上がった。イリーナさんも17もの破片を浴びて、その一つは肝臓を大きく傷つけた。手首にはまだ破片が入っている。

ゆっくりゆっくり廊下を歩いて、子ども部屋に入っていく。私たちも後について入った。

棚も、クローゼットも、リザちゃんのもので溢れていた。ぬいぐるみ、たくさんの知育玩具、練習帳、イリーナさんが文字を教えるために作ったシート。可愛らしいドレス。注いでいた愛情の量が迫ってくる。その中で、空っぽのベッドが妙に大きく見えた。

リザちゃんが寝ていたベッド

イリーナさんにとって、リザちゃんは待望の子だった。妊娠中に心臓の異常がわかり、医師は中絶を提案したという。イリーナさんは断固拒否した。全てうまくいく、ちゃんと育てていく、そう決めていた。出産後2か月でダウン症と確定診断が出ると、いろいろ勉強して、知識を深めていった。7か月の時には心臓の手術をした。たくさんの管に繋がれ、鼻と口を覆う呼吸器をつけた小さなリザちゃん、その手をイリーナさんが握っている写真がある。

入院中のリザちゃん

赤ちゃんから女の子へと育っていくリザちゃんに、イリーナさんたち家族はありったけの愛情を注いだ。発達のプラスになることもたくさん経験させた。リザちゃんは言葉はなかなか出なかったものの、落ち着いた性格の子で、動物の形や名前、色などもちゃんと理解していった。

イリーナさん
「リザが何かできるようになると、その度にうれしくて泣いていました」

イリーナさんとリザちゃん