啓発や社会進出は進むものの…
その後、アルビノのミュージシャン、ジョン・チティは啓発活動を続け、取り締まり強化の一環として、日本でいう公安委員会のメンバーにも選ばれた。また、2022年には彼の半生にインスパイアされたザンビア発の映像作品がNetflixで配信された。
ジョンのような人たちの取り組みもあってアルビノの人権についての社会の意識は高まってきている。モニカ・ムンガ選手も今やザンビアでは有名人、セレブっぽい出で立ちで雑誌に登場したこともある。
一方で、アルビノ殺しは無くならない。
取材で通ったルンダジ~チパタ間の幹線道路沿いでは、我々が去って1か月ほど経った頃、アルビノの男性の遺体が発見された。無残な姿だったと報じられている。これとは別に、アルビノの墓が暴かれて遺体が奪われたケースもあったという。
ザンビアと国境を接するマラウィでは2022年11月、祖母の家で寝ていた3歳のアルビノの女の子がさらわれ、殺害された事件が衝撃を与えた。遺体の左脚が持ち去られていたという。その2週間前には2歳のアルビノの男の子の拉致未遂もあった。
同じく国境を接するタンザニアでは2024年5月末、2歳のアルビノの女の子がさらわれ、2週間ほど後に遺体が発見された。こちらも遺体は一部が切り取られていた。地元の報道によれば警察は9人を逮捕、その中にはウィッチドクター、教会関係者、そして実の父親も含まれていた。
根は深い。アルビノという存在への理解がひろがり、迷信が消失していくまでには、少なくとも一定の地域では、まだ時間がかかるのかもしれない。
モニカがパリで走るのも、それを多くの人が見るのも、そうしたステップの一つだと信じたい。

















