旧ソ連のミハイル・ゴルバチョフ元大統領が91歳で死去しました。ソ連崩壊から30年となった去年、ゴルバチョフ氏はJNNの書面インタビューに応じていました。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く現在。ゴルバチョフ氏は去年のインタビューの時点で「このままでは大惨事になりかねない」「責任ある対話への移行が一刻も早く行われるべき」と警鐘を鳴らしたうえで「ロシアの未来は一つ、民主主義だ」と訴えていました。
冷戦終結の立役者として知られる、ゴルバチョフ元大統領の書面インタビュー全文を公開します。

(※2021年12月23日に公開した記事に一部修正を加えて再公開しました。)
■ノーベル平和賞ムラトフ氏は「本物のファイター」
ーーソ連崩壊30年となる節目の年に、あなたが支援に携わった「ノーバヤ・ガゼータ」の編集長ムラトフ氏がノーベル平和賞に選ばれたことをどう受け止めていますか。ロシアでは現在、独立系メディアの活動が制限され、野党が自由に選挙に参加できないなど、あなたが進めた「ペレストロイカ(政治体制改革)」や「グラスノスチ(情報公開)」に逆行するかのような動きが目立っています。コロナ禍が強権的な政治に拍車をかけたとも指摘されていますが、これからのロシアに真の民主主義が根付くのでしょうか?
ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領:
これは非常に重要なイベントです。ノーベル委員会は今回の決定で、現代の世界におけるメディアの重要性を強調しました。ドミトリー・ムラトフ氏とは長い間、それこそ、30年以上の付き合いがあります。我々は友人でもあります。彼は、正直で、勇気と責任感があり、あらゆることに関心を持っています。彼は真実と正義の信奉者です。そして、彼は本物のファイターでもあります。ノーベル委員会は今回、ジャーナリズムを専門にする人たちが、どのような気質を持っているべきかを示しました。

前世紀の80年代半ば、私は、まさに同じ信念に導かれ、ペレストロイカとグラスノスチにつながるプロセスを開始しました。残念ながら、30年前、よく知られた出来事(=1991年8月のクーデター未遂事件など)により、ペレストロイカは中断させられました。それまでにペレストロイカは「模索」、「予測」、「失敗」、「実現」など、さまざまな段階を経ていました。もし、最初からやり直すとしたら、多くのことを別の方法でやるでしょう。