『私は嘘つき扱いをされ、棒で何発か叩かれました』

 メルシエ神父はその時の経験を、パリ外国宣教会からの要請を受け、報告書にまとめています。

 【メルシエ神父の報告書より】
 『私は、なぜ自分が逮捕されたのかについては全く考えませんでした。私の良心に、やましい点は何ひとつありませんでしたから。憲兵は私を責める証拠は何も持っていなかったので、ただ「お前がしたり言ったりした日本に不利になることをすべて話せ」と言うばかりでした。私が望みに合わない返事をするたびに、私は嘘つき扱いをされ、棒で何発か叩かれました』

 スパイの疑いを一貫して否認したメルシエ神父。拷問は次第に激しさを増していきました。
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 【メルシエ神父の報告書より】
 『憲兵たちは厚いブーツをはいたまま私の腰の上に乗り、踊ったり、足踏みしたり、思いきり鞭で打ったりしました。ごく自然に私は死の準備をしました。死ぬことがきっと、最も確実にこの監獄から出る手段でした。ある日限界に達した私は「たとえ死刑であっても刑に処されるほうが、毎日理由も結果もなく拷問されるよりましだ」と言いました。憲兵は皮肉な口調で答えました。「それではお前に優しすぎるだろう。俺の計画では、ここでますます拷問を厳しくして、お前をじわりじわりと殺すつもりだ」と』