100歳の元看護婦が今、若い人たちに伝えたいこと

15歳で看護婦として戦争に参加したツェリンさん。

「たくさんの若い兵隊たちが死んでいくのがとても悔しかったです。日本、ソ連両方の兵隊が命を落としていくのですから、悲しいに決まっています」

100歳になった今、若い人たちに伝えたいことがあるといいます。

「戦争というのは大変悲惨なものです。今も世界のたくさんのところで戦争が起きているのは残念で悲しいです。二度と戦争を起こさないようにして欲しい、と伝えたいです」 

編集後記

ノモンハン事件の現場となった草原には、黄色い花が点々と咲いていた。ここで死んだ兵士は4万人を超える。遥か故郷を離れ、彼らは何を思っていたのか。85年前の痕跡が大地に刻まれたままになっているノモンハン事件の現場で、そんなことを考えていた。

こんな話を聞いた。10年ほど前、ハルフゴル村の「ノモンハン事件」博物館を2人の日本人の若者が訪ねてきた。見学を終えた2人が博物館に置いてある感想ノートに書き残した言葉。それは。

「今やれば日本が必ず勝つ」。

この話をしてくれたミャグマルスレンさんは「彼らは悪くないよ。きっと豊かな日本から来た若者たちは貧しいモンゴルを見て、なんでこんな国に負けたんだろうって素直に思ったんだと思うよ」とフォローしてくれた。
でも、正直に言おう。私は若者たちの想像力の貧困さに呆れ、とても嫌な気持ちになった。

戦争に負けた歴史は格好悪い。負けた歴史は「なかったこと」にしたい。太平洋戦争が終わり80年が過ぎようとしている今もそのような「負の歴史を直視しない」風潮が世にあふれている。ノモンハン事件で敗北を喫した当時の日本もそうだったのだろう。
「なかったことにしよう」。実際、ノモンハン事件の反省も教訓も生かされず、日本は太平洋戦争に突入し、破滅的な敗北を喫することになる。
同じことを繰り返していないか。私たちはいつになったら歴史から学ぶのか。モンゴルの大地は私たちに、問いかけている。

文 JNN北京支局長 立山芽以子
撮影 JNN北京支局 室谷陽太