不審がられた生活 刺すような視線

それまで住んでいた兵庫県尼崎市では、周囲に同性カップルであることを伝えることができなかった。不審がられていることを感じ、刺すような視線を避けるように暮らしていた。

2人は大村市に引っ越してすぐ、アパートの住民全員に挨拶に行った。意を決して、LGBTQの当事者だということもその時に伝えた。

2人の心配とは裏腹に、挨拶した住民は全員が「普通」の反応だった。そして朝、夕、すれ違う時にも「普通」に挨拶し話をしてくれた。何気ない世間話や挨拶が、2人を認め励まし毎日が輝いていく様だった。

「予想外でした、こんな素敵な暮らしができるなんて」
隣町に住む藤山さんの家族とも、毎週のようにキャンプやイベントに出かけたり、甥の自転車の練習につきあったり。子どもが5人いる藤山さんの弟は「助かる」と喜んでくれるし、2人も次世代への貢献に携われて心から嬉しいという。

「大村に引っ越してから、良いことがいっぱい起きて。これまでどうしても苦労する経験も多かったんですけど、そんな苦労が報われたな、というか」

松浦さんは大村市の職員の勧めもあり、「大村市地域おこし協力隊」に就任し仕事も得た。ここで誰かの、何かの力になりながら生きていくんだ。