2人の願い「夫(未届)」の持つ意義

住まいを整え、将来のマネープランも考えていく中で、今年5月雇用保険上の移転費をパートナーの藤山さんも受給できないかハローワークに相談に行った。回答は「生計を同一にしている親族であれば受給できる」

「生計を同一にしている親族」には異性の事実婚カップルも含まれる。
事実婚カップルの住民票には、世帯主との関係を示す続柄欄に「夫(未届)」または「妻(未届)」と表記される。一方、同性カップルは一般的に「世帯主」との続柄欄に「同居人」や「縁故者」と記される。

住民票の続柄を事実婚カップルと同じにしてもらうことはできないか?それまで2人は同じ住所に別々の世帯で住民票を申請し、それぞれ「世帯主」と登録していた。

大村市の窓口に世帯をひとつにする手続きを申請し、松浦さんを「世帯主」藤山さんを「夫(未届)」と表記するよう希望した。

大村市はその場で職員が協議し2人が「パートナーシップ宣誓制度」を利用している事、「記載の仕方は自治体の判断に委ねられる」ことを踏まえ、2人の希望に沿った住民票を発行した。結果、全国的にも例がない同性カップルに対する「夫(未届)」の住民票が交付されることになった。

「夫と書いてもらった書類は今まで一つもなかった。認めてくれるところがあるんだ。本当に嬉しい」

驚きと安心で肩の力が抜けた。住民票を受け取ると涙が流れた。それまでどんなに緊張していたかを初めて自覚した瞬間でもあった。