宮藤官九郎と「震災」

田幸 「季節のない街」(テレビ東京)もよかったです。これぞクドカン、宮藤官九郎というよさが出ていました。山本周五郎原作の昭和の風景を今やるのに違和感がないのかと思っていたら、震災の仮設住宅を舞台として描いたうまさがある。クドカンは、マイノリティに対する描き方みたいなところだと、ちょっと雑になるのが個人的には気になっていたんですけど、今回は、それこそ置き去りにされた人たちをうまく描いています。彼のよさをもう一度思い出しました。大好きな作品です。

倉田 震災を描きつつも「ナニから12年」みたいな言い方で、震災という言葉をはっきり使わなかったり、その辺がクドカンさんらしい。社会からはみ出しがちというか、社会の一員であるにもかかわらず、何となくいないものとして扱われているような人たちを、クドカンさんはしっかり描きたいんだというのがすごく伝わってきました。

 その人たちの生活も、ただ温かい、優しいだけじゃなくて、例えばホームレスの親子が、飲食店から余ったご飯をもらう。それはすごく温かくて優しい行為なんですけれど「火を通してね」と言われたのに通さず食べて、子どもは死んじゃうわけです。温かい反面、そういう厳しさもあるのが世の中なんだというのを強く感じられました。

NHKならではのこころみ

影山 障碍を真正面から描いた「パーセント」(NHK)の評価も高いです。

田幸 NHKは最近、障碍の当事者を使う、ということをやっています。この7月期に地上波で放送される「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」というドラマも、もともとNHKのBSで放送したものですが、ダウン症の方が当事者として出演されている。草彅剛さんが出ていた「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」(2023)も当事者の方が出られていた。

 「パーセント」では、障碍のある当事者に出演して頂き、なおかつ、そういう人たちがドラマに出るには、どういう現実的で困難な問題があるか、ドラマづくりの現場を生々しく見せることで、シビアに問いかけています。

 この企画は、障碍をテーマにした番組「バリバラ」(NHK)をドラマに組み込んだというか、コラボのような形でスタートしています。まさにNHKだからできる作品だなと。試みとしての新しさとドラマとしてのおもしろさとで、今の時代じゃないとつくれない作品だと思いました。