彼女はその後も、SNSに近況を載せていました。なんと爆撃の翌日に、女の子を出産したといいます。

私たちは知人を通じてマリアンナさんを探し、ついに会うことができました。親子3人で、東部・ドンバス地方のある町で暮らしていたのです。

マリアンナさん:
「爆撃の後、救急車でマリウポリの別の病院に運ばれました」
「赤ちゃんのための物だけ持っていきました」

私たちは、1番の疑問をぶつけました。

小川:
「あなたはクライシスアクターでは、ありませんよね」

マリアンナさん:
「もちろんクライシスアクターではありません。」

小川:
「映像・写真には様々な反響があったと思いますが」

マリアンナさん:
「みんなにフェイク呼ばわりされました。『出産が行われてもいない病院のそばで写真を撮った』と」
「私ができることは、見たこと・聞いたことだけを話すことです。それが唯一、正しいことだと思っています」

彼女はクライシスアクターではありませんでした。

ただ正直に話す姿勢が、思わぬ事態を招きます。ロシア人ジャーナリストに、こう話したのです。

マリアンナさん:
「空爆はありませんでした。空からではなく、地上からの攻撃だけでした」

自らの感覚に正直に答えたこの言葉は、ロシア側の主張の1つ「空爆はしていない」という点を支持することに繋がります。

すると、彼女を嘘つき呼ばわりしていたロシア側からの批判が止んだ代わりに…

マリアンナさん:
「今度はウクライナ側からの誹謗中傷が始まったのです。そんなロシア寄りの発言をするんだったら、子どもと一緒にがれきの下敷きになって死ねば良かったと言われたんです」

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■「クライシスアクターかもしれない」と疑問を抱かせることが狙い

秌場聖治ロンドン支局長:
実際にクライシスアクターがいるのか、いないのか、まさにその疑問を持つこと自体が、この「クライシスアクター」という言葉の働きだと言っていい。

情報をかく乱したい側にとっては、自分たちに都合の悪い映像を「でっちあげ」「出ている人は“クライシスアクター”なんです」と言うことで、自分たちに有利な方向に話を持っていく。