あごひげを蓄えた長身の男性がカメラの前に現れた。表情は穏やかだ。
ロシアの捕虜となったウクライナ兵・ニカライさん。捕虜交換により解放され、いまは故郷に戻って療養している。
国山ハセンキャスターのリモートインタビューに、捕虜になったいきさつから、静かな口調で語り始めた。

それは壮絶な体験だった。

執筆:
「TBSテレビ つなぐ、つながるSP 戦争と嘘=フェイク」
プロデューサー・山岡陽輔

ニカライさん:
「私たちは、ロシアの空挺部隊と戦っていました。相手の装甲車3台を破壊しましたが、近くでミサイルが爆発、私は負傷しました。ミサイルの破片による傷が57か所、頭や首、左の手足はひどい状態でした。ほかに脳震盪、鼓膜の損傷もありました」

ハセン:「けがをした後、どうしたんですか?」

ニカライさん:
「爆風で飛ばされた私を、仲間が建物の中に運びました。私は自分で応急措置をしました。痛み止めを注射して、止血帯を巻こうとしましたが、左右の手足は血だらけで、顔に温かいものが流れていると感じたので触ってみるとそれは血でした。傷が非常に多かったので、どうすれば良いか分かりませんでした。それでも応急措置をして、私は戦いを続けました。でも仲間は、私を避難させるために撤退を始めたんです。そして、捕虜になりました」

連行されるウクライナ兵

■手を縛られ地下室へ。「横になって、ただ殺されるのを待っていた」

捕虜になったニカライさん。目隠しをされて手を縛られ、どこかの民家の地下室に閉じ込められたと言う。

ニカライさん:
「6人がぎゅうぎゅう詰めの状態で拘束されていました。私はケガをして出血が多かったため寒気を感じていました。仲間と体をぴったり合わせ、体温で暖をとりました」。

ハセン:「食事は?」

ニカライさん:
「最初の3日間は何ももらえませんでした。3日後、ゆでたジャガイモを2個とたまごを1個、水を2口与えられました」