その取材というのが…
ニカライさん:
「ジャーナリストたちは、自分たちのシナリオ通りに話をさせました。『ここではジュネーブ条約に従って扱われ、食事と水をもらい、治療を受けている』と言わなければなりませんでした。しかしそれは嘘です。治療を受けたのは7日目でしたし…」
さらに屈辱的だったのは、仲間の悪口を言わされたこと。
ニカライさん:
「ロシアのシナリオ通りに話さなければならなかったんです。『ウクライナ軍が悪い』『ナチがいる』『多くの兵士がアルコール中毒だ』『ウクライナ軍はロシアを恐れている』。しかし事実は違います。兵士はみんな命を捧げて自分たちの領土や国のために戦っているんです。ロシア軍が侵略して、私たちは守っています。自分たちの領土、家、家族を守っているだけなんです」
ニカライさんがロシア国営放送の取材に答えた動画は、ユーチューブで世界に公開された。ロシアのプロパガンダに利用されてしまったのだ。
■ある日…それは突然の出来事だった
朝4時に起こされ、仲間と一緒に車に乗せられたニカライさん。車内でロシア兵から意外な言葉が告げられた。
ニカライさん:
「『ロシアの兵士と交換に行くから静かにしろ』と言われたんです。そしてザポリージャ州のある橋まで連れて行かれました」
ハセン:「捕虜交換の様子を教えてください」
ニカライさん:
「私たちは向き合って歩いていきました。橋を渡ったとき、ウクライナの国旗を見ました。とても嬉しかった。その後、バスに乗ってからみんなに電話が配られ、家族の連絡先を渡されました。私たちはそれぞれ家族に電話して、『私は生きている。捕虜交換で戻ってきた』と伝えました。最高の気持ちでした」
ハセン:「ニカライさんは、最初に誰に連絡したんですか?」
ニカライさん:
「母に連絡しました。『私は生きている。元気だ』と言いました。ケガのことは言いませんでした。母親は泣いていました。生きているだけで幸せでした」

最後に、聞いてみた。
ハセン:「軍に戻りたいという気持ちはありますか?」
ニカライさん:
「はい、あります」
ハセン:「命を落とすかもしれないと分かっていても、戻りたいですか?」
ニカライさん:
「国のためではなく、自分の家族、ウクライナ国民のためなら、覚悟はできています」。
