地縁社会側のオープン性

このように上手に使いこなせば極めて利便性の高いSNSを地域づくりに有効に活用していくには、地域側の“懐の広さ”が必要だろう。

SNSを介してつながってくる人々は匿名性を有した多種多様な人々であり、時にきわめて狭い視野となっているものも含まれる。こうした人達と協働するとどうしてもそれまでの地域づくりの進め方、地域の旧来からの物事の進め方ではうまくいかないことも多々ある。

こうした時に「郷に入っては郷に従え」という地域主導の旧来型の進め方をすることは、関係してくれる外部者たちを遠ざけるリスクが有ると同時に、それが発信され、炎上につながるリスクすらある。外部からやってくる様々な人々とのコミュニケーションを、「新しい価値観との出会い」として懐深く受け止めていくような包摂性が必要である。

こうした包摂性は多様な価値観の存在を共有することで生まれると考えられるため、特定のリーダー単独というよりも、地域の老若男女など地域内の様々な価値観を持った人材との連携によって受け止めていくことが必要であり、効果的であろう。

こうした様々な価値観を持った外部人材を地域の力に継続的に取り入れることができれば、人口が減少していく中でも持続的な地域づくりを展開していくことが可能だろう。

<執筆者略歴>
田口 太郎(たぐち・たろう)
徳島大学大学院社会産業理工学研究部教授。
専門分野は都市計画、地域計画、まちづくり。 
1976年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻(博士後期課程)単位取得退学。博士(工学)。
総務省 地域おこし協力隊アドバイザー。全国町村会 今後の地域政策のあり方に関する研究会委員。徳島市国土強靭化地域計画推進委員会委員。徳島県総合計画審議会委員。
著書に「人口激減社会の地域の自律とは」「流動型ライフスタイル社会における循環型地域の構築」など。

【調査情報デジタル】
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