同質的集団と多様な地縁型社会
このように人口の少ない地方に様々な変化をもたらしてきたSNSであるが、その特性が十分認識されないままに広く利用されているのも、その特徴である。特にX(旧Twitter)などのSNSは表示される他者の投稿もシステムのアルゴリズムによって似たような趣向性の投稿が表示される仕組みになっている。
つまり、我々がそれぞれのアカウントを通じて見ている他者の投稿はシステムによって選別された“近しい”考えに基づいた投稿であることだ。これはSNSに限らずネット上で目にする広告類もビッグデータによって閲覧者の趣向性に合わせた広告が表示されるようになった。
一方で、それを見ている我々は、多少なりともそれを頭で理解しているものの、直感的には自身と似た感覚の投稿が並んだSNSのタイムラインから「自分の考え方が主流」と思ってしまう。自身が同質的集団の中に自身を位置づけることで、現実社会での位置づけと大きなズレが生じてしまう。
一方で、実際の地域社会の価値観は社会の成熟化とともに多様化してきており、都市ほどではないにせよ、地方でも多様化は進んでいる。多様な意見がある中での自身の意見であるにも関わらず、他人の意見は全て自分への批判的な意見として受け止めてしまうのだ。
結果的に地域の中でも自身の意見の特殊性に気づかなくなってしまうのである。各種の「炎上」の火種となる投稿は、若者や都市側から発せられることが多いが、発信する側にもSNSの性質をよく理解したうえでの発信が求められる。もはやこうした理解は“留意する”というよりも、SNS利用の上でのリテラシーとして認識しておくことが必要だろう。