沿岸パトロールをしていた元ナイジェリア軍兵士、上官から「タンカーを見なかったことにしろ」
小川彩佳キャスター:
「飢えている」「生き延びるため」という言葉がありましたが、豊かな資源の恩恵はナイジェリアの人たちに広く行き渡っていないということですね。なぜ、資源を使えない状況になっているのでしょうか。

23ジャーナリスト 須賀川拓 記者:
原油ゲリラの男性は「政府が得ている莫大な利益は私たちにはまったくおりてこない。だからこそ私たちは、この犯罪に手を染めるしかないんだ」とはっきり言っていました。
実際、違法精製所は夜に作業をするので、夜の空を照らし出すわけです。ジャングルで炎が立ち上ればすぐに場所を把握できるので、当局も摘発しようと思えばすぐにできるはずです。
こうした状況がもう何十年も続いていることから、権力構造のかなり上層部にいる人間が見て見ぬふりをしている、何らかの見返りを持って見逃していると考えないと、整合性が取れないわけです。

しかも、これは氷山の一角のさらにその一部だと感じるエピソードもありました。私はナイジェリア軍の元兵士で海軍のいわゆる沿岸パトロールを指導していた立場の人物に取材することができました。
そのナイジェリア軍の元兵士によると、10年ほど前、沿岸の大きな油田・油井(オイルディグ)に国籍不明の巨大なタンカーが横付けし、原油を満載して、また沖に消えていったそうです。これを上官に報告しようとしたところ、上官から「お前はあのタンカーを見なかったことにしろ」と言われたといいます。
巨大なタンカーが運行でき、海軍の沿岸警備体制すらもすり抜ける、もしくは目の前を通過しても摘発することができないという状況です。どれだけの闇、腐敗があるのか考えると、気が遠くなるような思いでした。
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<プロフィール>
須賀川拓 記者
23ジャーナリスト 前JNN中東支局長
ガザ・イスラエル・イラン・シリアなど中東地域を取材