■各国で核戦力増強の動きが…
4年後に期限切れを迎える、米ロ間に残る唯一の核軍縮条約である「新START」を更新する協議は、ウクライナ侵攻でストップしたまま。

そうした中、ロシアは複数の核弾頭が搭載できるICBM「サルマト」を、年内に実戦配備する計画を発表しました。
ロシア・プーチン大統領
「これで我々が、さらに強くなることは間違いない」
また中国は、核戦力増強を続けており、数年で1000発の核弾頭を保有すると分析されています。さらに…

北朝鮮・金正恩総書記
「我が国の核戦争抑止力は万全だ」
北朝鮮は「使える核」と呼ばれる小型の「戦術核」の開発に取り組んでいるとされ、近く7回目の核実験が行われる可能性も指摘されています。
核廃絶の「理想」とは裏腹に、国際社会が核兵器使用に備えつつある「現実」。そうした理想と現実の狭間で、今、日本は―
■核廃絶に向けた日本政府の対応は…
日本の総理として、初めてNPTの会議に出席した岸田総理。

岸田総理
「いかに道のりが厳しいものであったとしても『核兵器のない世界』に向け、現実的な歩みを一歩ずつ進めていかなければならないと考えます。その原点こそNPTなのです」
その一方で、6月に開かれた「核兵器禁止条約」の締約国会議には、日本と同じく、アメリカの核の傘の下にあるドイツなどがオブザーバーとして参加する中、日本は、背を向けたのです。

77年前に広島で被爆したサーロー節子さんは、日本政府の姿勢に対し…

被爆者・サーロー節子さん
「(NPT会議で)核兵器保有国の政策を支持するけど、『核のない世界』を求めている。矛盾がありませんか…?」
核廃絶への「理想」に向けて、どういう道筋を描けばいいのか。NPT会議にも出席し、その難しい問いに正面から取り組んでいる若者がいます。

KNOWNUKESTOKYO共同代表・高橋悠太さん(21)
「核兵器が有る限り、全ての戦争は核戦争に発展する危険があります」
広島出身の大学生・高橋悠太さん。中学生の頃から、核廃絶を訴える活動を続けてきましたが、ウクライナ侵攻に衝撃を受けたといいます。
KNOWNUKESTOKYO共同代表・高橋悠太さん(21)
「私たちが積み上げてきたものを全部いきなりぶち壊されたというような感じがあって、結局自分がやってきたことっていうのは、どこまで効果があるんだろうかっていう、そういう無力感に陥ったんですね」
しかし、そうした時、ある人物の言葉を思い出したといいます。

被爆者・坪井直さん
「あきらめるなよ、ネバーギブアップ!」
広島で被爆し、その記憶の伝承に取り組みながら、2021年に亡くなった坪井直さん。高橋さんは長年、坪井さんとの交流を続けていました。

KNOWNUKESTOKYO共同代表・高橋悠太さん(21)
「(坪井さんは)ことあるごとにネバーギブアップだって、感情を押し出すことはもちろんあるんですが、同時に、対話の重要性っていうことを訴えてきた。理性でもって、意見が異なる人とも対話によって糸口を見つけて、手をつなぐと。諦めずに核兵器の廃絶っていう、この理念を私なりの方法で訴え続けたい」
理想と現実の間で揺れる核廃絶の動き。広島、そしてまもなく長崎が、原爆の日を迎えます。
(「サンデーモーニング」2022年8月7日放送より)