広島の原爆の日。「悲劇は2度と繰り返さない」、そんな思いの風化を心配する声もありますが、若い世代からは新たな動きも生まれています。
■ウクライナ侵攻下で迎えた原爆の日

77回目となる原爆の日を迎えた広島。今年の平和記念式典は、これまでと少し様子が違いました。

松井一実・広島市長
「世界中で、『核兵器による抑止力なくして平和は維持できない』という考えが勢いを増している…」
ロシアによるウクライナ侵攻で、プーチン大統領が核兵器使用の可能性に言及するなど、核の脅威が現実味を増しているからです。
国連事務総長として12年ぶりに参加したグテーレス氏も、今の状況への危機感を露わにしました。

国連・グテーレス事務総長
「核保有国が核戦争の可能性を認めることは断じて受け入れられない」
■7年ぶりのNPT再検討会議が開幕したが…

こうした中、8月1日、ニューヨークの国連本部ではNPT・核拡散防止条約の再検討会議が、7年ぶりに開催されました。
191の国と地域が加盟するNPT。米ロ英仏中の5か国に核兵器保有を認める代わりに「核軍縮に向けた交渉に取り組む」ことが求められています。
今回、この会議に宛ててプーチン大統領から、こんなメッセージが…

「核戦争に勝者は存在せず、決してその戦いはしてはならない」
核戦争を否定する一方で、“核の恫喝”を行うロシアに対し、各国から非難の声が相次いだのです。

ドイツ・ベアボック外相
「ロシアは核について無責任な発言を繰り返しNPTが50年間で達成したすべてを危険にさらしています」
しかし、「核兵器を持つ国」と「持たない国」の隔たりは大きく、全会一致が原則の最終文書の採択は容易ではありません。
実際、冷戦後進んできた「核軍縮」の時計が今、大きく逆に回転しようとしているのです。