「台南市にも市民球団を」賛同した頼氏のとった行動は

頼氏は総統選で自身が「野球ファン」であることを前面に押し出した。演説中はオリジナルのスタジアムジャンパーに身を包み、プロモーション用の映像や選挙対策本部の内装も、野球をコンセプトに作り上げていた。一方の謝氏も、野球には強い思い入れがある。

元台南市議 謝龍介氏
「台南市は野球の歴史がとても古い。私の父親も野球選手でした。元西武ライオンズの郭泰源(1985年~1997年在籍 速球を武器に“オリエント・エクスプレス”と呼ばれた)も台南市出身で、高校時代の同級生だよ」

ちなみ頼氏と謝氏は共に、台南市に本拠地を置くプロ野球チーム「統一ライオンズ」のファンだと公言している。そんな関係もあってか、謝氏は頼氏に「台南市にも城市棒球隊(都市野球チーム)を作ろう」と提案したという。城市棒球隊とは市政府が運営する市民球団で、ドラフトで指名されなかった球児らを対象にしていた。再びプロ目指すことも可能で、台北市や台中市、高雄市など他の主要都市では既に始動していたという。

元台南市議 謝龍介氏
「台南出身で他の県や市で野球をしている若者がたくさんいました。地元にはプロ球団以外の受け皿が何もないからです。市民球団が設立されれば、外に住んでいる多くの若者が故郷・台南に戻って野球をすることができるようになる。これが当時の私たちの願いでした」

頼氏も賛同し、話は順調に進んでいったという。

揃って野球大会を視察する頼氏(中央左)と謝氏(中央右) 2011年

元台南市議 謝龍介氏
「頼氏は私の提案を気に入りました。当時二人とも野球が大好きでしたから。彼は有名な元プロ野球選手を探し、市民球団にどのような指導者が必要かなど議論を開始しました」

ところが、頼氏は徐々に市民球団の話をしなくなったという。変わって民進党の関係者らが次々と協議に加わるようになる。2014年、台南市は念願の市民球団を発足したが、謝氏は党派的利害を優先され「民進党の手柄にされた」と感じている。

元台南市議 謝龍介氏
「頼氏は市長ではあるが、自分は民進党の人間だと思っている。だから市民球団の件を民進党中心の態勢に移行したかったのでしょう。私から見れば野球のようなスポーツにまで政治を介入させるのは、いかがなものかと思う」