■「レズビアンやホモセクシャルやゲイ・・・。それは罪です。罰を受けなければなりません。」
富山市議会の田辺裕三市議(自民党)。選挙で旧統一教会の関連団体から支援を受けた。
田辺市議は去年4月の地方選挙で当選者38人中36位で初当選。当落の差はわずか237票だったという。「あの人たち(教会関係者)がいなかったら当選していなかった」と話す。少ない票差で当落が決まる地方選挙でこそ“まとまった票”は威力を発揮する。
かくして旧統一教会が存在感を示した富山市議会で果たして、何があったのか?
実は去年、富山市では同性同士の事実婚を自治体が独自に認める「パートナーシップ制度」導入を検討していた。それに対し、一部の市議が同性婚やLGBTに反対する勉強会を開いている。この勉強会の講師に招いたのは旧統一教会の政治団体「国際勝共連合」の幹部だったのだ。
勉強会を企画した自民党市議 成田光雄氏
「(講師は勝共連合幹部ですよね?)そうなんですか、わかりませんでした。名前も初めて知りました。(中略)旧統一教会の関連団体の幹部と知っていれば招かなかった」
市議とはいえ自民党の政治家が国際勝共連合を知らないのも問題だが、講師となった人物も旧統一教会はもとより国際勝共連合の名は出さず「国際青少年問題研究所所長」としていた。
番組が調べたところ、この人物は同じ肩書で、6年前、川崎市でも自民党の会派が催したジェンダー問題をテーマにした勉強会の講師をしている。さらに3年前には富山市で、児童虐待と家庭教育関連の勉強会で講師を務めている。テーマは一貫してジェンダーや家庭の問題で多様性を許さない姿勢だ。
ジェンダー問題を研究する山口智美准教授は言う。
モンタナ州立大学 山口智美 准教授
「ここまでやってたのかって、ちょっとびっくりしました。もともと旧統一教会と関連団体は勉強会をよくやるんですが・・・。具体的な政策、例えば富山ではパートナーシップの導入を阻止するとか、同性婚を阻止するとか、そういう政策面で影響したい・・・」
旧統一教会は何故、地方の選挙に協力して、“シンパ”議員を増やし、勉強会を開いてジェンダーやLGBTの自由度を阻止しようとするのか。
世界平和統一家庭連合と名前を変えた後も、大切にされている教祖・文鮮明氏の発言集「天聖経」に、その答えともいうべきあきれた考えが記されていた。
統一教会創設者 文鮮明氏
「今、アメリカでレズビアンやホモセクシャルやゲイのようなものが起きています。それは罪です。罰を受けなければなりません。これは自分勝手な愛です。すればするほど破壊されていくのです。(中略)人間がそうなる時はこの人類が滅亡するのです」
今回の参議院議員選挙で、旧統一教会の組織票が入ったといわれる安倍元総理の秘書井上義行氏は、選挙期間中に教団の集会に出席してこうスピーチした。
「私は同性婚には反対ということを信念をもって言い続けます」
しかし、この発言、必ずしも票欲しさに文鮮明氏の偏った教えを支持して言っただけではないかもしれない。
毎日新聞 古賀攻 専門編集委員
「同性婚に反対とか、LGBTに対するネガティブな対応とかは、自民党右派の元々の考え方なんですよ。それと統一教会がこういう教えを持っていたことが親和性があった。」
実際、日本では1998年に男女共同参画社会基本法ができて以降もなかなか“多様性”は進んでいない。むしろ逆行しているむきもある。2005年安倍政権では「男らしさ」や「女らしさ」も大事だとして、第二次男女共同参画基本計画で「ジェンダーフリー」と言う文言を使わないように通知を出していたり、2020年にも選択的夫婦別姓の文言を基本計画から削除したりしているのだ。
日本において性の多様性の問題が進まない一因に旧統一教会が日本の政治に巧妙に入り込んでいる側面はあるかもしれない。自民党政権がこうした宗教右派の考えに傾いている面もある。ただ考え方や主張が一致し、支え支えられの関係になることは悪いことではない。今問題なのは、旧統一教会が“宗教団体の顔”よりも“反社会勢力の顔”を持っていることにあるのである。
全国霊感商法対策弁護士連絡会 紀藤正樹 弁護士
「私はこの宗教団体は反社会性を持っていると思っています。例えばなけなしの金を奪って、高額献金させて家庭崩壊を起こるとか。その金が、いわば政治活動に使われている。それを無視してはいけない。自民党を含め超党派でこの問題を議論していただかないと次の政策が決まらないんです」
(BS-TBS 『報道1930』 8月4日放送より)