「音と時間」が犯罪成否の判断材料か

(元大阪地検検事 亀井正貴弁護士)そういう観点からしたら、選挙の演説を妨害するというのが、いわゆる犯罪の要件ですけれども、その場合は単純な妨害ではなくて演説ができなくなる。もしくは、聴衆が演説を聞こえなくなる。つまり「音」ですね。それから「時間」を考えて、演説そのものができなくなる、聴衆が聞こえなくなる、それぐらいまでに達するかどうかということですから、犯罪の成否を判断するのは非常に微妙で難しいところがあります。

――東京15区補選の選挙戦では、ほかの候補者は演説を取りやめたりすることも起きています。それはどう捉えたらいいでしょう。

(元大阪地検検事 亀井正貴弁護士)それは、犯罪に達しないけれどもやはり邪魔になったからやめたということであって、犯罪に達するかどうかは別です。例えばすごい音量で、拡声器でマイク近くでワーッてやって、これを30分間やったらおそらく威力業務妨害容疑で検挙して、選挙の自由妨害というのは後でやるんですね。

というのは、自由妨害罪は選挙に関してやるということですから、やっている人たちの主観的な要件の立証、背景や動機も必要になる。その意味では、まずわかりやすい容疑でやって、後でちゃんとやっていくケースもあります。一般的に自由妨害はポスター破りが一番多いんです。なぜかというと器物損壊が明らかだから。こういうケースもそうですけれど、一応表現の自由、特に候補者の場合には、自己の政治的見解を述べている可能性もあるから、それ以上に難しいんです。