「カーボンニュートラルの目標は否定しないが、負担・犠牲の部分を理解しているのかな」

―――脱炭素社会に向けた日本の環境政策は「慎重で良い」か「世界をリードすべき」か、視聴者にアンケートを行った結果、「慎重で良い」が58%、「世界をリードすべき」が42%でした。橋下さんはどうでしょうか?
「僕は『慎重派』。これは賛否両論あるので僕が言ってることが絶対的に正しいという訳じゃないんですけど。これはもう政治家とか一部の学者とかが『カーボンニュートラル、カーボンニュートラル、2050年』とか言っていますけれど、目標は僕は否定しませんが、それをやるためにどれだけの犠牲を強いられるかっていうその犠牲部分っていうのをみんなわかった上で目標を言っているのかなと。僕がいろんな大阪府市政改革をやる時に、メディアとかにものすごく言われたのが、『メリット・デメリットをちゃんと明らかにせよ』と言われるわけですよ。多分そうなんですよ、政策の選択って。でもこのカーボンニュートラルの話は、もうこれゴールのところばっかりが出ていて、この犠牲の部分・負担の部分っていうのはあんまり報道されてないよね。これ達成するのに1400兆円が必要だとかね。それから日本も新興国の方に今度1兆円支援するんですよ。支援は悪くはないですよ、いいですよ。でも、この気候を抑えて、それをやるためにみんなが1400兆円の金を入れ、それから電気料金もどんどん上がっていく。その負担、全部これ被るんですかね。僕が思うのは、ゴールは別に否定しなくてもいいんだけど、現実もちょっと見ながらそのゴールに向かっていくっていう姿勢が必要だね。今、現実見てないのよ」

―――COP26の時でしょうか。インドが、今の先進国にお金がたくさん集まってるのはこれまでの歴史の中でたくさん二酸化炭素を出したり火力発電を行ってきたりしたためでしょと。そういったものが全部削減されると発展途上国はどうやって発展していくのかという叫びがあったんですが、まさにそういう部分ということですか?
「そういうこと。特にヨーロッパ、EUが『気候変動、気候変動、カーボンニュートラル』って言うんですけど、ちょっと待てよと。一番石炭使って、一番CO2を排出して、一番今生活が豊かになって、そのCO2排出することによって一番豊かになったそこの国はどこかってイギリスですよ。だって産業革命の時に蒸気機関を動かし始めた時からあの人たちは石炭を燃やしてるんですよ。過去の分を全部計算して、これをやっぱり新興国の方にある程度認めてあげないと、自分たちが先にCO2排出して豊かになって、さあ今から我々もその豊かになりたいと思っている国が『CO2だめですよ』って言われたら、この人たちはどうするんですか。じゃあ支援しましょうというふうになってるんだけど、約束したお金を出していないんですよね。あれは1000億ドルだから10兆円、10兆円先進国が出すって言っているのに、出し切っていないんですよ。これはひどいですよ。これね、僕らは豊かな国にいる、だから僕らはもうカーボンニュートラルでもいいけれども、1回中東でもアフリカでも本当に厳しいその地域に行ってみて。彼らはちょっとでもいいから豊かになりたいと思っている。その時に電気が必要。でも太陽光なんかまだまだ。じゃあ石炭燃やさなきゃいけない。その人たちに向かって『あなたたちカーボンニュートラルのためにCO2削減をやめなさい。病院も作れない、それから電気もない、そういう生活をしなさい』と言えるのかと。だから国連の国際会議にいる人たちは僕は学級委員みたいな感じがしてならないね。この現実を知らない。自分たちが豊かになって、自分たちの環境の中で何かきれいごとを言っている学級委員にしか見えないんだけど」

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―――ドイツは脱原発を決めています。再生エネルギーが増えますが、政府が高値で買い取るじゃないですか。その分、結構転嫁されるんですよ。電気料金は2倍になりましたよ。
「日本もそうですよ。今1万円ぐらいは再生エネルギーの負担分になっているんじゃないですか。急激に上がってきていて」

―――学生が生活できないとかものすごい副作用があったけど、国が決めた方向だからということでみんなそれに従いましたけどね。
「まだまだ上がるんですよ。スペインでも再生エネルギーが7割ぐらいとかいうことで成功しているように言われているけど、今スペインはどんどん電気料金が上がっているし。これは日本だけのことじゃなくて、新興国のことをどうするんだと。やっぱりこの目標をやる時に、負担とか犠牲の部分を、しっかりとCOP26が『世界の皆さん、こんだけの負担を被ってくださいね』と。その負担を何も言わずにゴールだけ言ってるのは僕は納得できないな」

―――気候変動がどんどん激しくなっているということについては、橋下さんはもうしばらくこの状況で行っても持つだろうとか大丈夫だろうという感じですか?
「それはね、科学者の言っていることを全否定はしません。アメリカのトランプ元大統領じゃないんで。だから科学者が言っていることはその通りなんだけど、無理だったら無理で、その時にその時の技術やその時の世代が何とかしてくれっていう、そんな感じです。だからなにもその目標を否定するんじゃないんだけれども、やっぱり貧しいところがCO2を出させてくれって言ったら、それはわかるよねと。それから電気料金、これがもし3倍になるっていうんだったら、みんなが税金をね、消費税を30%まで上げて、電気料金とかなかなか大変なところにちゃんとそこをフォローするよとかね。だからそのあたり、もし消費税が30%になってもいいんですかとかいうことになった時に、みんながどう判断するかですよね。そういうとこの負担がない中で『これ目指しましょう』というのは、やり方として違うんじゃないのって。どういう負担があるの、どういう犠牲があるのってことをちゃんと言ってよと。ものすごく負担があるんです。ものすごく犠牲を伴うんだけど、今は全くそこが議論されていないわけ。グレタ・トゥンベリさんとかが一生懸命叫んでいるけど、いやいやあなた方が今そうやって便利な生活をしてるのは、CO2をバンバンバンバン出してあんな便利な生活できているんでね」