秘伝のタレで再スタート 食で笑顔を

高校を卒業したばかりだった押田さん。しかし、避難生活をするうちに、食でふるさとを支えたいと強く思うようになったと言います。

5代目の、父・純治さんとともに、継ぎ足し用のレシピから秘伝のタレにアレンジを加え、2013年、豚壱として再スタートを切ったのです。

押田英駿さん「ここが初めの一歩だと思って、ここから再起していくしかないと思って無我夢中に始めた」

初めの一歩。その決意を胸に、押田さんは焼き場に立ち続けてきました。

4月7日。押田さんの姿は、ふるさと、富岡町にありました。この日は、町に春の訪れを告げる桜まつり。震災と原発事故から14年目の春を迎え、今年は震災前と同じ夜の森公園をメインに開かれました。

県内から訪れた人「すごく天気が良くて桜もきれいで良かった」
県内から訪れた人「人が明るい顔をしているのが良い」

この日は、フライドチキンのキッチンカーで調理する押田さん。食で多くの人たちを元気づけたいと、今年3月から始めた新たなチャレンジです。

ふるさとの桜並木に魅了される多くの人たちを見て、押田さんは、かつての町の賑わいを思い返していました。

押田英駿さん「桜まつりがみなさんが戻ってくるきっかけになって、賑わっているのがうれしい」

もちろん、秘伝のタレを使った豚丼も大好評。訪れた人たちにも笑顔が溢れます。

子ども「おいしかったです!お肉!」

少しずつ復興への歩みを進めるふるさと富岡町。押田さんはこれからもその支えになりたいと話します。

押田英駿さん「私のとりえは飲食しかないので、食を通してふるさとの良さをわかってもらえるように食事を提供したい」

一度は途絶えた秘伝のタレ。そこには食べた人を笑顔にしたいという思いが受け継がれていました。

富岡町によりますと、桜まつりには2日間でのべ1万7000人が訪れたということです。