複数回の相談…防ぐことはできなかったのか

「ただ、仮に発症してしまった場合であっても、本人はそのことになかなか気付くことができない。基本的に自覚が無いのだ」
「他人が、家族や身近な人が、異変に気付き、専門医のいる病院へ連れていった場合にようやく診断できて、発症していることに気付くことができるといったケースがほとんど」

事件発生前、警察に対して何度も「電磁波攻撃」の被害について相談をしていたという河野被告。警察からの連絡を受けた保健所に対しても、同様の訴えを複数回行っていたという。身近な人が、差し迫った状態だとは思わなかったとしても、せめて、警察や行政機関が異変に気付き、あるいは危険性を予見し、ケアをすることはできなかったのだろうか。

例えば「措置入院」という制度がある。精神的な障がいにより、自傷他害のおそれがある場合、本人や家族の意思に関わりなく、都道府県知事の権限で行われる、いわば強制的な入院のことで、その多くは、警察官からの通報を端緒として行われる。言い換えるならば、警察官は保健所などを通じて都道府県知事に通報する義務が発生する。その後は、必要に応じて精神保健指定医による診察が行われ、2人以上の医師の判断が一致した場合、強制的に措置入院となる。

ただ国の統計によると、措置入院に至る割合は地域ごとに大きく異なっているのが現状だという。