準々決勝、準決勝のための練習

「とにかく感染症対策が第一 甲子園には完全な状態で臨みたい」と慎重を期す

永田監督にとって、この3年間はコロナとの戦いでもあった。2020年4月、鳴り物入りで日大三島の監督に就任するも、グラウンドで練習できたのは4月1日、2日のわずか2日。以降、未知のウイルスに振り回されることになる。

「あいつら自身も顔がわからないし、顔を覚えることに必死だったところからスタートした。慣れないiPadを使ってリモートで指導する日々が続いた」。

夏の選手権は中止となり、代替大会は初戦敗退。苦い1年目だった。それでも「最後まで一生懸命やるチームだった。これがせめてもの救い。感謝しかない」。

今年のチームも振り回された。ただでさえ進学校。土曜日も授業があるため、「静岡で一番練習試合が少ない」という。コロナ禍で練習試合がまったくと言っていいほどできず、センバツに繋がる去年の秋季大会もほぼ、ぶっつけ本番だった。しかし、結果は東海大会を制し、38年ぶりに聖地の土を踏むことになる。

春夏連続出場を期待がかかった夏の静岡大会。大会開幕と時を同じくして始まった“感染爆発”によって、全国各地でその影響が出る中、ポリシーともいえる全員練習も分けて行わざるを得なかった。

それでも、ルーティンは崩さなかった。大会直前3回に分けて行った強化練習。大会が始まっても早朝5時半からの練習は続けた。前日の準決勝、延長13回タイブレークの激闘の末迎えた決勝戦の朝も、およそ1時間汗をかいてから、草薙球場へと向かったという。

「選手の動きがすごく重かったので心配したが『このために、準々決勝、準決勝のために練習しているんだぞと。名門校は、ここからのために練習しているんだぞ』と常々言ってきた。これが実感できたことが、このチームに新たな伝統が生まれるのではないか」

試合中、常に厳しい視線を送っていた永田監督、この時ばかりは目じりが下がった。