「コンプライアンスを踏み越えたものがやりたいと思ってるわけでは全然ない」

磯山晶:
『不適切にもほどがある!』は、(TBS内の)考査部という所と、「編成考査」という所にダブルチェックを受けていて…まず台本の準備稿でチェックがあって、次に決定稿でチェックして、更に「完パケ」という出来上がりの状態でもう1回チェックされて…。3かける2だから計6回のチェックを受けています。

ただ、第2話で、「今どきバージンなんて、はやんねえし、10代のうちに遊びまくってクラリオンガールになるんだよ!」というセリフがあって。

(事前に)OKは出ていたんですけど、出来上がった完パケを見たら怖くなっちゃって…。「あくまで昭和における個人の価値観です」というテロップを自主的に入れました。やはり会社名を出す(クラリオンはカーオーディオなどを手がける会社)時は、絶対にその会社の人が悲しまないようにしたいとは思いますね。

藤井健太郎:
僕も、特定の誰かが激しく傷つく可能性があるものには気をつけていますね。第三者の「見ていて気分が悪い」みたいな意見は正直どうでもいいと思うんですけど、差別がダメなのは当然として、その内容と直接関係のある誰かが傷ついたり嫌な気持ちになるものは気をつけなきゃいけないな、と。

磯山晶:
『不適切にもほどがある!』の冒頭に「この作品には不適切な台詞や喫煙シーンが含まれています」というテロップを流そうと結構、前から決めていたんです。

だけど、『水曜日のダウンタウン』を見てたら、1月10日放送の「ビートルズの日本公演で失神した人 今でもビートルズ聴き続けてなきゃウソ説」の中で、「こちらの映像には一部現代では不適切な表現が含まれます」というテロップが出て、「被った!」と思いました。

藤井健太郎:
コンプライアンスチェックの会議があるので、その映像を「使いたい」という話をそこでして、担当のスタッフに社内規定だったりを確認してもらったら、結果、使っても大丈夫だし、なんならルールだけでいえば注意テロップなしでも大丈夫かも…という話になったんです。ただ、それはそれで見ている人もびっくりしちゃうと思って、自主的に注意テロップは入れることにしました。

そういえば、昔はそういうコンプライアンスをチェックする担当もちゃんとは存在していなかったと思うんですけど、どうでしたっけ?

磯山晶:
でも、ドラマは台本を審査部というところに出して、「この表現はダメ」とか言われたりしてましたね。

藤井健太郎:
本当に際どいものは審査部に判断を仰いでいたと思いますが、バラエティでは当然、準備段階では想定できないこともあるし、細かい部分までいちいちチェックするそれ用の担当者というのは当時いなかったはずですね。だから昔は、割と自主判断の部分が大きかったんですけど、今は必ず担当に見せているんで…もちろんその判断が全て正しいとも思っていないですけれど、ラインを踏み越えたものが出る可能性はだいぶ減ってますよね。

特別に何かコンプライアンスを踏み越えたものがやりたいと思っているわけでは全然ないので、コンプライアンス担当にノーと言われて、「いや、これはこうだから」と戦うこともあるんですけれど、逆に「いいよ」と言われても、「ちょっとやめとこうかな」とこちらで判断してやめることもあります。