メジャー元通訳に聞く “勝手に送金”は可能?
藤森祥平キャスター:
会見が終わった後に各メディアの反応を見ていたんですけど、一様に「思ったよりもしゃべってきたな」と、中には「びっくりした」という話をしている人もいました。アメリカでは捜査中のことに関してはなかなか話しません。記者もそれに関しては深追いしてもしょうがないというところもあったんです。その割には自分で用意したメモをよどみなくしゃべり切っていたという点での驚きだと思います。そういう距離感がある中で、会見が終わった後に記者の方から大谷選手に質問を強引にぶつけるというスタイルはなかったのかもしれません。

小川彩佳キャスター:
もっと聞きたいというモヤモヤ感も記者からは特になかったということですか。
藤森キャスター:
もちろん多くの疑問が残っているので改めて調べが進んでいきますし、記者から質問をぶつける機会が来ると思います。終わった後には、全米メディアも会場の外で中継をしたり、スポーツ担当記者以外のジャーナリストの姿もありましたので、改めてアメリカでの注目度の高さを感じました。
喜入友浩キャスター:
では、何を大谷選手が語ったのかを整理していきます。
(1) 問題を知ったのは韓国での第1戦の終了後
(2) 借金返済に同意していない、送金してくれと頼んだこともない
(3) 僕の口座に勝手にアクセスして送金していた
ただ疑問も残ります。
(1)7億円近くの送金に気づかなかったのか?
(2)勝手に本人以外が送金することはできたのか?
小川キャスター:
この点、小島さんは通訳として、選手のそばにいた立場としてどのように感じますか?
スポーツ&コミュニケーション専門家 小島克典さん:
私がメジャーリーグで通訳をしていた時代はiPhoneができる前で、電子送金が便利に行われていた時代ではありません。憶測も入りますが、ある超富裕層の方に聞いたところ、上限50万ドルほどまではノーチェックというか本人がやればできると言っておりましたので、仮にそれが事実だとしてかつ大谷選手の口座も最大50万ドルまでいけるという条件があったことを水原元通訳が知っていたのであれば、操作できなくはないのかなとは思いました。

小川キャスター:
チェックというのは本人確認などの暗証番号やパスワードですか?
小島克典さん:
何かを知ってさえいれば、指紋認証や目の瞳孔での生体確認はなくてもできるとは聞きました。
喜入キャスター:
7億円近く動いても本人は気づかないものなのでしょうか?
小島克典さん:
ちょっと前に元プロ野球選手の里崎さんが話していたのですが、例えば年俸1億・毎月1000万ぐらい入ってくる口座で入ってくるお金の方が多いと、シーズン中に記帳などしないので気づかないこともあるんじゃないかなとは言っていました。そんな話を「億」を稼ぐ選手からナマで聞くと、そういうもんなのかなとは思いました。
喜入キャスター:
メジャーの通訳はどんな仕事をするのか、小島さんに聞いたところ▼移籍時の新居探し、▼口座開設、▼クレジットカードの作成、▼グラウンド内外の通訳などがあります。

小島克典さん:
我々通訳はアスリートの可能性を最大限に引き出して、最終的にチームの勝利に貢献することを求められる仕事なんですけど、グランドから出ても球場と自宅の間も英語の標識ばかりですから、日本人選手はわからないわけですよ。そうすると自宅から球場までの安全な道、試合が終わった後に安全に帰る道みたいなところまでガイダンスするのが現役時代の務めだと思っていました。
これは別に契約書に書かれているわけでもないんですけど、心情的にはやりたくなりますよね。そうするとここのレストランは美味しそうだなとか、ここはデーゲームのときしか行けないなとか、“食”のところにもかかってくるし、どんどん仕事なのか仕事じゃないのか、そこがにじんでくるわけですよね。
そうすると、やった方がより選手のパフォーマンスやストレスの軽減になるなとなると、どんどんにじみが広がっていっちゃうことはありました。
小川キャスター:
それだけ密接な関係にあると、通訳だけがアクセスできる口座を開設したり、高額な資金の移動もできるわけですか?
小島克典さん:
憶測ですけれども、メインのバンクアカウントへのアクセスは本人だけだと思うんですよ。ただサブアカウントとかサードアカウントとかがあったのであれば、サブとかサードのアカウントはスタッフと共有することはあるのかなと。日本人の感覚だと、銀行口座から電気代・水道代・ガス代は自動で引き落とされるじゃないですか。でも、アメリカは第三者が自分の口座から大きくお金を引き落とすことを嫌がる国なので、クレジットカードで払う以外は基本的に自動引き落としをしていないです。

そうすると、遠征から帰ってきてポストを見ると請求書がたくさんあるのは、アメリカで生活していると結構ストレスなんですね。
それで多くの方はクレジットカード払いにしているとは思うんですけれども、そうじゃなかった場合に経費用のアカウントを作って、そこでやっといてくれっていう会話は想像に難くないかなとは思いました。
喜入キャスター:
なぜ大谷選手が送金できた方法について語らなかったのか、カリフォルニア州の弁護士資格を持つ清原博さんに伺いしました。
清原さんは、大谷選手が知っていたが語らなかった場合、「被害者である以上、犯行の手口を喋っても不利益はない。むしろアピールしてもよい。ただ今回は『水原氏を非難する場ではない』という判断があったのではないか」と分析しています。
